2023 Fiscal Year Annual Research Report
金融市場における高頻度取引の発展が市場参加者の厚生に与える影響についての研究
Project/Area Number |
20K01742
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
西出 勝正 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40410683)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マーケット・マイクロストラクチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の最終年度としてこれまでに得られた研究成果を論文として完成させ,学会発表を中心とした活動を通じて国内外の研究者に広く意見を求めた.その結果,以下の2本の論文が査読付国際論文雑誌に採択された. 1) Ebina, T. and K. Nishide (2023), Annals of Operations Research, 332(1-3), 277-301 この論文は,新規参入を検討している2社の競争を考察したものである.参入費用と変動費用に非対称性が存在する場合には先導企業の参入時における立地が中央から外れるという結果を得ている.これは,先行研究では得られていない結果であると同様に高頻度取引の参入意思決定において重要な示唆を与えるものであり,学術的にも高い貢献であると言える. 2) Hayashi, T. and K. Nishide (2024), 93, 103168 この論文は,高頻度取引と低頻度取引の2種類の情報投資家がいる金融市場を考察したものである.高頻度取引が市場に与える影響については実証研究において合意が得られていない.また,理論研究に関しては,高頻度取引の技術を持つ情報投資家が市場取引における便益を独占するとの負の影響を指摘するものが多い.それに対して,本論文では,取引注文を通じた私的情報の浸透を避けるために,高頻度取引の技術を有する情報投資家が他の市場参加者に対して自主的に流動性供給に応じるという,非常に興味深い結果を得た.また,便益の独占に関しても懸念される程度の独占や集中は生じないとの理論結果を得た.この結果は学術的な観点だけでなく市場制度や規制に対しても重要な示唆を与えるものであり,学術的にも高い貢献であると言える. 以上,2023年度は当初予想していた以上の実績を得ることができた.
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