2022 Fiscal Year Research-status Report
The effect of Japan's Longevity on Monetary Policy
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20K01743
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
左三川 郁子 (笛田郁子) 一橋大学, 経済研究所, 非常勤研究員 (30843776)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本銀行 / 非伝統的金融政策 / リスク性資産の買い入れ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は日本ファイナンス学会秋季全国大会ならびに日本金融学会秋季全国大会にて論文「QQE下における日本銀行のETF買い入れ」について報告した。 日銀のリスク性資産の買い入れ、とりわけ2013年4月以降の量的・質的金融緩和(QQE)政策の下で「質的緩和」と位置付けられてきた上場投資信託(ETF)の買い入れに注目し、①日銀はどのような状況の下で買い入れを進めてきたのか(政策反応関数)、②買い入れの結果、株式市場で何が起きていたのか、③日銀はETF買い入れの目的を果たしたのか、について考察した。離散選択モデルによる検証の結果、日銀はETFの購入に際し、TOPIXの前日終値から当日午前終値までの株価リターン、TOPIX午前終値の5日移動平均からの乖離率、高頻度データから計測した午前の実現ボラティリティ(Realized Volatility)、前日のリスクプレミアム指標などを参照していることが確かめられた。また、買い入れの結果、株価リターンは午後に上昇し、ボラティリティは低下していたことが確認できた。この傾向は日銀の買い入れ増額に伴い、増幅されていた。 日銀はETF買い入れの目的をリスクプレミアムに働きかけるためと説明してきた。ETFの買い入れにより、株式益回りと安全資産利子率の差で表されるイールドスプレッドは日次で見ても週次で見ても縮小していることが確かめられた。また、オプション価格から計算される分散リスクプレミアム(Variance Risk Premium)も、日銀のETF買い入れによって縮小していた。 以上の内容をとりまとめ、2023年度中に査読誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大規模データ(高頻度データ)を用いた分析に時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度秋の日本ファイナンス学会ならびに日本金融学会で報告した論文(前半パート)を修正し、2023年度中に査読誌に投稿する。学会報告論文の後半パートについては分析作業を継続し、2023年度中に別論文として査読誌に投稿する予定である。 また、日本銀行が伝統的金融政策を実施してきた1999年以降を対象に、自然利子率の推計作業を進める。特に1990年以降の人口高齢化と減少、その後の長寿化が自然利子率の低下に及ぼした影響について調べ、論文の形にする。
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Causes of Carryover |
2022年度秋の日本ファイナンス学会ならびに日本金融学会で討論者から頂戴したコメントを受け、追加の作業を進めた結果、査読誌への投稿が2023年度にずれ込んだ。次年度使用額については、追加のデータ購入とデータセットの整備、査読誌に投稿するための論文の英語翻訳と確認作業に充当する予定である。
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