2021 Fiscal Year Research-status Report
世界的な民間債務の拡大に潜むリスクと新興国のマクロ経済政策
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20K01744
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北野 重人 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (00362260)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 新興国 / 資本規制 / 2国モデル / 政策協調 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界経済の大きなリスク要因として近年関心の高まっている、いわゆる過剰債務の問題に関するリスクを中心として、それに対応するマクロ経済政策について主に分析を行うものである。特に、新興国に内在するリスクとそれに対応するマクロ経済政策の効果について、包括的に検討することを課題としている。
新興国のマクロ政策として、グローバル化した世界経済の下では、金融政策等の既存の政策だけでは十分な対応が行えないという認識が、特に世界金融危機後、IMFを含めて国際機関、政策担当者、大学の研究者の間で、一般的になっている。こうした背景から新しい可能性を持つ政策の一つとして資本規制政策が注目されている。
本年度の研究実績として、こういった資本規制政策について、2国モデルによる分析を行ったことを挙げることができる。具体的には、資本市場が不完全 (incomplete) なことを特徴とする2国モデルを構築した。その上で2国が行う資本規制政策について、どういった厚生水準がもたらされるかを動学的一般均衡モデルを用いて検討した。各国が個別に自国の厚生水準を最大化する政策を行った場合 (open loop Nash game equilibrium) と、2国が協調して両国を会わせた厚生水準を最大化する政策を行った場合 (Ramsey policy) との比較を行った。主な分析の結果として、資本市場が不完全であるほど、協調政策を行った場合とそうでない場合の差が大きくなり、政策の協調が重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の一つを国際学術雑誌に公刊することができたため、概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
世界的なパンデミックは、各国の信用緩和政策と相まって、新興国における民間部門の債務をさらに増加させるとともに、内在するリスクを拡大させている。この現在進行形の問題を引き続き注視し、過剰債務に関するリスクと、それに対応するマクロ政策について分析を進めていくとともに、インフレに伴う米国の金融正常化が、世界経済にどういった影響を及ぼすかも含めて、様々なマクロ政策の効果を分析する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナの影響で開催されなかった学会や研究会があっため、旅費等に余りが生じたが、来年度以降使用する予定である。
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