2023 Fiscal Year Research-status Report
世界的な民間債務の拡大に潜むリスクと新興国のマクロ経済政策
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20K01744
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北野 重人 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (00362260)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 新興国 / ソブリンウェルスファンド / コモディティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界経済の大きなリスク要因として近年関心の高まっている、いわゆる過剰債務の問題に関するリスクを中心として、それに対応するマクロ政策について主に分析を行うものである。特に、新興国に内在するリスクとそれに対応するマクロ経済政策の効果について、より包括的に検討することを課題としている。
新興国のマクロ政策として、グローバル化した世界経済の下では、金融政策等の既存の政策だけでは十分な対応が行えないという認識が、特に世界金融危機後、IMFを含めて国際機関、政策担当者、大学の研究者の間で、一般的になっている。こうした背景から、資本規制政策やマクロプルーデンス政策等の新しい政策が注目され、様々な角度からのより包括的な分析が進められている。
本年度の研究実績として、世界的なパンデミックによるコモディティ価格の急激な変動に直面するコモディティ輸出国に関するものがある。コモディティ輸出国においてソブリンウェルスファンドが果たす役割について新しい角度から検討を行った。新興国においては、コモディティ価格と金利スプレッドの間に特有な関係があるという最近の実証的知見がある。その新しい実証的知見に基づき、ソブリンウェルスファンドの厚生を改善させる効果について分析を行っている。分析の結果、そうしたコモディティ価格と金利スプレッドの関係がより強いコモディティ輸出国ほど、ソブリンウェルスファンドは、厚生を改善する上で、有効な政策となることを本研究では明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
依然、残されている課題があるものの、研究成果を国際学術雑誌に公刊することができたため、概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
世界的なパンデミックへの対応として各国は信用緩和政策を取ったことにより、新興国における民間部門の債務は増加し、内在するリスクはさらに拡大した。また、米国の金融正常化によって、債務国の利払い負担が増加したことにより、さらに新興国におけるリスクは拡大している。加えて、世界的なインフレの影響は、新興国にも大きな影響を及ぼしており、こういった様々な要因を考慮して、過剰債務に関するリスクと、それに対応するマクロ政策についての分析を中心に、より包括的な見地から、新興国のマクロ政策に関する分析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
学内業務等のためやむを得ず参加できなかった学会や研究会があっため旅費等に余りが生じたが、次年度有効に使用する予定である。
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