2023 Fiscal Year Annual Research Report
高次元金融資産間の相互依存関係:ファクター・コピュラによるアプローチ
Project/Area Number |
20K01749
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
立花 実 大阪公立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70405330)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レジーム・スウィッチング・コピュラ / HTZ非対称テスト / S&P500指数 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は(i)米国S&P500指数とその構成銘柄間の関係を(ii)レジーム・スウィッチング・コピュラ・アプローチと(iii)Hong, Tu and Zhou (2007)(以下HTZ)が開発した非対称テストの双方を用いて分析を行った。一般に複数の株式リターンの関係は相場の下落局面における相関の方が上昇局面における相関よりも高い「非対称な関係」だと言われている。本研究の特徴はその非対称な関係を上記(i)~(iii)を組み合わせて詳細に分析した点にある。先行研究では、株式市場間の国際的な関係や、複数の銘柄から構成される株式ポートフォリオ間の関係、あるいは株式ポートフォリオと市場全体との関係について多くの分析が行われてきたが、個別株式と市場全体の関係を取り扱った研究はまだ少ない。また、コピュラのみを用いた研究やHTZのような非対称テストのみを用いた研究はあるものの、両方を使った研究も少ない。本研究ではこれら3つの要素を取り扱っている点で新規性がある。分析の結果、以下の点が明らかになった。第一に、個別株式リターンとS&P500リターンの関係は、データの加工を何も施さない場合、HTZ非対称テストを適用しても非対称な関係が検出されなかった。一方、一変量時系列モデルの標準化残差を用いた(いわゆる条件付きの)依存関係については非対称な関係が検出された。第二に、レジーム・スウィッチング・コピュラ・アプローチより、条件付きの非対称な関係は時間を通じて常に存在するわけではなく、対称な関係と非対称な関係が交互に現れることが分かった。第三に、非対称な関係が観測される時期は、市場全体のボラティリティーが高い時期に集中していることが分かった。最後に、回帰分析により、配当利回りの低い株式ほど、また、固有のボラティリティーが高い株式ほど、非対称性が高いことが分かった。
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