2020 Fiscal Year Research-status Report
金融証券市場のネットワーク構造を考慮した信用連鎖リスクの研究
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20K01754
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
菅野 正泰 日本大学, 商学部, 教授 (00551061)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 信用リスク / 複雑ネットワーク / 中心性指標 / 金融証券市場 / COVID-19 / 多変量DCC-GARCH / 地域別株価指数 / ソブリンデフォルト |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度はシンジケートローン市場やREIT等の市場ネットワーク構造を解明し、市場の相互連関性がもたらす信用連鎖の分析を行う予定であったが、折しもコロナ危機の到来により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が市場に与える影響について、信用連鎖リスクの観点から計量分析することとした。COVID-19は世界保健機構(WHO)によりグローバルパンデミックに指定され、世界金融危機以降で最も影響が大きい市場インパクトとなる。研究の視座は、新規感染者数や基本再生産数など、COVID-19ネットワークの指標と各種金融市場変数との相互連関性の分析にある。第1の分析は、感染症の数理モデルとして、SIRD(Susceptible-Infected-Recovered-Dead)モデルを本邦向けに開発し、感染拡大状況を示す基本再生産数を計算し、当該指標と東証株価指数(TOPIX)との相互連関性を調べた。また、株式市場ネットワークへのCOVID-19リスクの伝播状況を、最小全域木を使って調べた。第2の分析は、東証33業種別株価指数を利用して都道府県別の業種別株価指数を合成し、多変量DCC-GARCHモデルを使い、COVID-19の都道府県別業種別のCOVID-19感染拡大状況と地域経済の関連性について分析した。第3の分析は、数理モデルにより、CDSプレミアムと国債価格から、G10+7諸国のソブリンデフォルト確率を計算し、各国のCOVID-19関連の財政支出とソブリンデフォルトの関係を分析した。また、ソブリンデフォルトネットワークとCOVID-19ネットワークの関係を、中心性指標を使い分析した。 以上、3つの研究を行い、国際学術誌に3編投稿、国内学術誌に1編採択、および学会発表2件の成果を挙げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、グローバルパンデミックとしてのCOVID-19が市場に与えた影響を信用連鎖リスクの分析として、①COVID-19感染症数理モデルに基づく企業の信用連鎖リスクの研究、②地域別業種別株価指数の合成による企業の信用リスクの研究、および③ソブリンデフォルトリスク連鎖の研究を行い、成果をまとめた論文は何れも著名な国際学術誌のレビューの段階にある。また、シンジケートローンのネットワーク分析は、COVID-19関連研究へのシフトのために一旦中断したものの研究の方向性は見えており、直近データを補完した上で分析を進める。結果、成果物として、3編の英語論文を作成し、全てワーキングペーパーとして公表済であり、併せて国際学術誌に投稿中の段階にある。 以上より、当初の研究課題と平仄のとれた研究成果を挙げていると判断されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中の論文については、必要な改編を行いつつ、全ての受理を目指す。また、COVID-19関連研究では、データが1年以上蓄積されてきたので、これまでデータ不足で実施が叶わなかった市場について計量分析を行う。また、シンジケートローン市場の分析および論文作成を実施する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、予定していた国際学会発表のための海外渡航が全て中止になった。当該金額は次年度にデータベースの購入等に充当する。
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Research Products
(6 results)