2020 Fiscal Year Research-status Report
On Property Liability Insurance Demand of Small and Medium-sized Enterprises- Empirical Evidence Based on Finance and Insurance Theories-
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20K01756
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
浅井 義裕 明治大学, 商学部, 専任准教授 (60433645)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中小企業金融 / リレーションシップバンキング / 損害保険 / 生命保険 / デリバティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果は、以下の2つである。 第1に、これまでの科学研究費補助金の研究成果を書籍としてまとめて、浅井義裕 (2021)『中小企業金融における保険の役割』 中央経済社を公刊した。書籍に関係する、これまで助成を受けた、科学研究費補助金は以下の通りである(1.基盤研究(C)「金融における生命保険の役割-ファイナンス理論に基づく実証的検証-」研究期間 (年度) 2017-2019年(研究代表者 浅井義裕)、2.基盤研究(C)「大震災に対するリスクマネジメント―家計における保険の役割―」研究期間 (年度) 2014-2016年(研究代表者 浅井義裕)、3.若手研究(B)「保険需要構造の分析‐ファイナンス理論の実証的検証‐」研究期間 2011-2013 年(年度) )。 これまでの研究成果(明治大学商学論叢、Journal of Banking and Finance、生活経済学研究、生命保険論集から公刊)をまとめていく過程で明らかになったことは、「銀行との関係が構築できていない中小企業ほど、損害保険、生命保険といった様々な保険を需要する傾向があり、資金上の問題に直面した際には、保険を解約して対応しようとする」ということである。また、「銀行との関係が構築できていない中小企業ほど、リスクマネジメント目的で、デリバティブを購入している」ことも明らかになった。つまり、多面的に、資金制約に直面する中小企業において、保険やデリバティブが活用されていることが明らかになった。 第2に、「中小企業の事業承継における信託と生命保険-サーベイと実証分析-」『信託研究奨励金成果論文集』41号 pp.170-186を公刊し、本研究と並行して、基盤研究(C)「M&Aと親族承継による中小企業の成長に関する理論的・実証的・制度的研究」(代表者:明治大学商学部教授 山本昌弘氏)を推進していく準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の進捗状況は、予定通り、もしくは予定以上の成果が2点、予定よりも成果が遅れた点が1点、合計3つの点から評価できる。 まず、第1に、以前に実施したアンケート調査に接続し、分析ができるように中小企業の財務データ(信用評点など、信用調査会社からしか得られないものも含めて)を購入することを計画していた。本年度は、中小企業の財務データを準備して、回帰分析などを進めていく準備を整えることができた。 また、第2に、従来から、研究の成果を国内外の学術雑誌へ投稿するだけではなく、一般向けの雑誌への寄稿や、学術書・一般向け書物の出版に向けた準備も行い、これまで、得られた成果を社会に紹介することを計画していた。令和2年度には、浅井義裕 (2021)『中小企業金融における保険の役割』 中央経済社を公刊し、こうした計画の一部を達成することができたと評価している。 一方で、第3に、当初予定していた、「中小企業の海外進出と損害保険需要」の分析については、予備的な分析にとどまり、学会報告や論文投稿の水準まで研究を進めることはできなかった。以上から、令和2年度は、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、以下の3つを検討している。 まず、第1に、令和2年度に、十分に進めることができなかった「中小企業の海外進出と損害保険需要」の分析を行う予定である。また、過去に行った研究(資金制約と生命保険の解約、リスクマネジメント目的によるデリバティブの購入)について、分析の方法を改良して、得られる含意を多く、頑健なものとしようと試みる。 第2に、浅井義裕 (2021)『中小企業金融における保険の役割』 中央経済社によって、研究成果をまとめた結果、中小企業では、資金制約の緩和のために、保険を利用していることが明らかになってきたが、あくまで日本の、製造業の中小企業に限られた結果であり、これまでの研究結果を、海外も含めて一般化することは難しい。そこで、すでに上場企業の保険需要の研究が進んでいる、アメリカ、中国、韓国、ドイツなどへと、海外の調査を展開していくことを検討している。 第3に、浅井(2021)は、製造業の中小企業に焦点を当てて分析を行っていたが、製造業以外の中小企業の保険需要の分析を進めることを検討している。新型コロナウイルス感染拡大により、飲食業、旅行業などで、大きな影響が出ている。従来の、休業損失に関する保険ではカバーできていないが、感染症と企業の資金調達、保険の役割について、考察を進めることを計画している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、主に以下の2つである。 まず、第1に、「Math Everywhere:数理科学する明治大学」からの研究助成を得た結果、当該の、科学研究費補助金 基盤研究(C)を利用する金額が減少したため、結果として、予定していなかった次年度使用額が生じた。 第2に、初年度に利用しなくなった科学研究費補助金を使って、アンケート調査の実施も検討したが、新型コロナウイルスの感染が拡大し、中小企業金融と保険の役割を分析するには、事態が収束してから分析を行ったほうが、学術的貢献だけではなく、得られる政策含意が大きくなると判断した。したがって、意図的に、アンケート調査の実施を次年度以降に先送りし、新型コロナウイルス感染拡大と、中小企業金融における保険の役割を明らかにしようと考えた。結果として、より大きな成果を期待した研究実施の先送りによって次年度使用額が生じた。
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