2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K01762
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小林 磨美 立命館大学, 経営学部, 教授 (40411566)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バンキング / 銀行規制 / 企業金融 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の2つの研究を行った。1つめは規制が銀行に対して資本算入を許可する証券の種類によっては銀行による過度なリスクテイクを促進する可能性についての理論分析にかかわる論文の改訂を行った。改訂版では負債性の資本証券に対して期待リターンの最大化を目的とする資本提供者が投資をすることにより銀行がよりリスクの高い投資選択をする仕組みを強調した。この論文はCapital composition and investor-driven risk-taking in bankingのタイトルのもとで海外の学術雑誌に投稿したが、10か月におよぶ査読期間を経たにもかかわらず掲載には至らなかった。その理由として、負債性証券に投資する際の投資家の意思決定が金利水準に影響できるとする設定が現実的ではなく、市場金利を所与として分析することが望ましい点が指摘された。 2つめは銀行のリスクテイクにかかわる拡張問題としてESG投資に着目した研究の準備をし、いまだ非公開ではあるものの一通り論文としてまとめた。企業金融およびバンキングの分野でのESGに係る先行研究をサーベイした結果、一般的にESG投資は非ESG投資に比べて低リスク・低リターンであることや、情報の非対称性がある場合に見せかけだけの環境投資があることなどを考慮に入れると、銀行の内部統治の厳しさが必ずしもESG投資を促進するとは限らない結果を得た。ところで本論文の基本モデルはひとつめの銀行モデルを拡張したものであり、査読の結果を受け、この2つ目の論文についても投資家の意思決定にかかわる部分の設定について大幅な変更をする必要が生じ、現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
執筆した論文を海外の学術雑誌に投稿してから査読結果を得られるまでに10か月以上かかり、掲載拒否の査読レポートを得られたのが2023年1月半ばであったことから、投稿していた論文やその論文の拡張問題を取り扱った仕掛中の論文について2022年度中の改訂が間に合わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
固定金利支払いを伴う負債性証券による銀行の資本調達問題を、銀行による資本提供者に対する配当支払いの問題として枠組みを再構築し、資本提供者による配当需要の発生要因と、それに対する銀行の資本構成決定問題について分析し論文にまとめる。また銀行ESG投資をめぐる問題についても現在執筆中の論文を改訂する。
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Causes of Carryover |
2022年度に終了を予定していたが、投稿論文の査読が大幅に遅れたことによる全体的な研究計画の遅延により予定していた学会への投稿などを見送ったため。2023年度には改訂した論文の英文校正や学術雑誌への投稿などを予定している。
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