2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K01763
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
田 園 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (10609895)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 負債 / 流動性 / 資金調達コスト / 配当 / 投資 / 倒産 / 資本構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、負債と流動性の相互依存メカニズムが企業の諸意思決定(投資、負債の発行あるいは償還、現金保有あるいは配当、流動性欠如時の外部資金調達あるいは倒産)および株式・負債の価値評価にどのような影響を及ぼすのかについて、理論モデルを構築して分析を行った。
まず、従来研究の資本構成の枠組みをそのまま利用し、負債をモデルに入れると、モデルの構造が不明瞭になり、負債と流動性マネジメントを融合するのは困難であることを確認した。そこで、負債の動的調整を考えた。具体的には、負債調整は企業の資本(担保と捉えられる)に比例して行われると仮定する。企業の資本が増加(あるいは減少)していれば、それに比例して負債を新規発行(あるいは償還)すると考える。この仮定は、技術面において、モデルの一次同次性を保つための条件でもある。そのおかげで、モデルを解析的に取り扱いやすくなった。そして、負債の現金保有に対する影響が流動性の提供vs.流動性の消耗というトレード・オフ関係をもたらすことを明らかにした。具体的には、負債を発行することによって、現時点における企業の現金保有を瞬時に押し上げるという流動性提供のプラス効果がある一方、将来(満期までの間に)現金保有から利払いに当てなくてはならないという流動性消耗のマイナス影響もある。流動性の側面から見た負債のトレード・オフ関係を明らかにすることで、資本構成に関する伝統的なトレード・オフ理論(負債の税効果vs: 倒産コスト)に対して新しい視点を与えた。さらに、変分不等式と不動点問題の組み合わせとして合理的期待均衡を定式化して、企業の株式・負債の価値関数を同時に導出した。
また、関連研究として、不確実性をリスクと曖昧さに分けて、特に曖昧さが企業の投資、配当及び流動性マネジメントに及ぼす影響を分析した論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の核心をなす問題意識「負債と流動性の相互依存メカニズムが企業の諸意思決定および株式・負債の価値評価にどのような影響を及ぼすのか」について、ある程度研究成果が得られたので、概ねに順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ・ショックの影響を踏まえて、今後の研究では、企業のバランスシートの左側にある資産の部において、資本あるいは現金にジャンプリスクがある場合、支払不能による倒産(insolvency default)と流動性不足による倒産(illiquidity default)を区別できるようにモデルを拡張する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行により、予定されていた国際学会への出張や対面による研究の打ち合わせをキャンセルせざるを得なくなったため、次年度使用額が生じてしまった。
次年度使用計画としては、リモートワーク用デジタルツールの購入やオンライン学会への参加費用等に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)