2020 Fiscal Year Research-status Report
リスク計測方法見直しに伴う諸問題へのノンパラメトリックな統計手法の応用
Project/Area Number |
20K01765
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
丸茂 幸平 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (90596959)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ノンパラメトリックな統計手法 / マイナス金利 |
Outline of Annual Research Achievements |
[期待ショートフォール推定のためのノンパラメトリックな手法の検討] 期待ショートフォール推定のためには,まずポートフォリオの損失分布の裾部分を推定する必要がある.現在実務では,経験分布の裾をそのまま利用する方法と,正規分布などのパラメトリックな分布を先験的に仮定する方法のどちらかが取られる場合が多い.経験分布を利用する方法は,パラメトリックな方法に比べて,観測されたデータの特性をより多く自然に取り込むことが可能である.その一方で,経験分布は離散的で,観測値の少ない分布の裾部分でこの問題は特に深刻である.本研究では,ノンパラメトリックな方法を使い,経験分布を利用する方法のように,データの特性を取り込みつつ連続な分布でポートフォリオの損失分布を近似する方法の開発を企図する.より具体的には,エルミート多項式系を使って分布の近似を行うものである.エルミート多項式系による分布近似の金融リスク計測への応用については,Marumo (2017) などで議論されているが,多項式を使うことから,一般には近似された確率密度関数の非負性が保証されない.本研究においては近似に制約を課すことで確率密度関数の非負性を担保することを企図している.2020年度においては,近似された確率密度関数がどのような場合に負の値を取るのか,数値的に実験を行うとともに,多項式の次数を無限大にした極限での性質を調査した.その結果,データが正規分布から離れている場合,平滑化パラメータを大きくする必要が生じることなどが明らかになった. [マイナス金利下でのイールドカーブモデルの構築]既存のイールドカーブモデルは概ね金利が正の値を取ることを前提としてきた.しかし本邦ではいち早くゼロ金利が実現し,現在ではマイナス金利が常態化している.こうした状態を表現できるようなモデルを構築すべく,状態変数を使った定式化が可能かを検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノンパラメトリックな手法の検討に関しては数値実験に着手し,いくつかの結果を得ている.また,近似の漸近的な性質の調査についても,調査はおおむね順調に進捗しており,新しい知見が得られることが見込まれる. マイナス金利下でのイールドカーブモデルの構築に関しては,状態変数モデルを使うことを検討し,良好な見通しを得ている. 上記以外にも,統計的な手法に関する基礎的な資料をまとめた.これを利用することにより,学部学生なども基礎的な技術を習得し,データ処理などの面で研究に参画する機会が得られることが期待できる. 当初は,オーストラリアの研究者や実務家との連携を企図していたが,コロナ禍にあって,物理的な交流が制限され,その面では多少の停滞があった.
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Strategy for Future Research Activity |
現在の方針のとおり推進することを検討している.とりわけ,エルミート多項式系による分布近似の漸近的な性質の調査に注力する.具体的には,Marumo and Wolff (2015) で示唆された,エルミート多項式系の幾何学的な解釈に基づき,漸近的性質を明らかにすることを企図する. また,コロナ禍の状況によっては,オーストラリアの研究者や実務家との物理的な交流を再開する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大により,計画していたオーストラリアへの渡航が中止されたことによるもの.状況が終息すれば,本年度の渡航を展望するが,再び中止せざるを得ない可能性もある.
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