2020 Fiscal Year Research-status Report
自社株の取得・再放出・消却に関する理論的・実証的研究
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20K01770
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森 直哉 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (10364184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 尚志 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (30403223)
河瀬 宏則 横浜市立大学, 国際商学部, 准教授 (30755781)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自社株買い / 消却 / 金庫株 / 売却処分 / シグナリング / 情報の非対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
後述するように、当初の計画から遅れているが、文献の収集、理論モデルの構築を進めている。 この研究は、企業のライフサイクルに応じた財務政策として、自社株の取得・再放出・消却を統一的なフレームワークのもとで理論的・実証的に分析するものである。従来、取得に関する研究は数多く存在しているが、再放出や消却に関する研究はほとんど存在していない。 既存の実証研究によると、有望な投資機会が少ない企業のほうが自社株を消却しない傾向が強く、これは想定される仮説とは反対の結果であるという。普通に考えれば、投資機会が多い企業ほど、売却処分(再放出)の余地を残すために自社株を消却しないはずである。ひとつの解釈として、投資機会が少ない企業は新株発行が困難であることが多いため、将来的な資金需要に備えて自社株を保有しておく可能性があると示唆されている。しかし、この解釈が適切でないと見ており、それに代わる見立てのもとで理論モデルを構築することが必要な作業となっている。 当初計画の時点から想定しているように、企業があえて自社株を消却したがるとすれば、それはペッキングオーダー仮説にもとづく逆選択コストの懸念を払拭するためと、投資機会を内部留保だけで賄えるぐらいに十分なキャッシュフローを予想しているというシグナルを発信するためだと考えている。しかし、それだけでは説明できないケースが残ってしまうため、より一般性の高いモデルを構築することが必要だろうという考えに至っている。 これに加えて、既存の実証研究において代理変数の選び方、出てきた結果の解釈が適切であったかという観点で、いくつか新しい着想を得ている。そのため、当初計画になかった観点から別の理論的なモデルの方向性も併せて検討を進めている。 その段階であるため、現時点で実証分析には着手できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
補助事業の初年度である令和2年度は、研究代表者の森、および、研究分担者のうち河瀬の2名がそれぞれ所属先の大学において学部・研究科の教務委員に任命された。この役目はもともと学内行政のために多大な負担を要するものであるが、それに加えて、不測の事態である新型コロナウイルスへの対応に迫られ、ルール設計、運営等に多大な時間と労力を費やすことになった。 また、新型コロナウイルス禍により、遠隔地への移動が制限されたため、3名が実際に顔を合わせて緻密にディスカッションをおこなう等の活動がまったく不可能となっている。実際上、オンライン上のやり取りに限られている。 以上により、研究を予定どおりに進めることが不可能になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「現在までの進捗状況」で説明したように、活動がひどく制限されているため、計画よりもかなり遅れている。 順序については当初計画どおり、研究代表者である森が理論的なモデルを構築し、そこでの比較静学分析から得られる実証的なインプリケーションをもとにして、研究分担者である山﨑、河瀬が実証分析の方法を決める段取りである。しかし、理論的なモデルの構築それ自体が遅れていいるため、研究分担者の手待ち状態になっているのが現状である。現在、この遅れを取り戻すために努力している。具体的には、初期の研究計画にはなかった理論的なアイデアの追加的な検討である。 当初計画ではデータベースの管理、入力の補助者を雇用する予定ではあったが、現時点で実証分析に着手できる状況に至っていないことと、新型コロナウイルス禍の影響で大学構内への立ち入りが制限されていた時期があったこと、これ以降もその可能性があること等が支障になっており、研究の進め方について再考の余地があると考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス禍の影響により、作業に大きな遅れが生じたたため、実証分析に着手できていないこと、それに伴って当初予定していた補助員の雇用が実現していないこと、遠隔地への移動が制限されているために旅費・交通費が発生していないこと等である。 次年度以降、実証分析のためのデータベース購入、必要な機器の購入が予定される。補助員の雇用については、活動が大きく制限されている下での研究の進め方として適切かどうか再検討する対象になっている。旅費・交通費については、遠隔地への移動制限に依存するため、見通しが不明である。
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