2021 Fiscal Year Research-status Report
投資家の株価に対する期待形成のあり方が引き起こすミスプライスと市場への影響
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20K01774
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
伏屋 広隆 青山学院大学, 社会情報学部, 教授 (00422395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 智紀 東北学院大学, 経営学部, 教授 (80538041)
中里 宗敬 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (90207754)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 逐次取引モデル / ベイズ更新 / 情報カスケード / ボラティリティの期間構造 / ミスプライス |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も引き続きコロナウィルス感染拡大の影響により、参加を予定していた学会の中止、学会のオンライン化により、対面での活発な意見交換ができない環境となった。また、本研究の重要な要素である経済実験も引き続き断念せざるを得ず、新しい学習モデルの実験からの検証が出来ないまま研究を続けていく厳しい状況は続いている。 そのような中で我々は、一部対面も含む49回のミーティングを行い、他研究の逐次取引モデルの検証、取り分け情報カスケードを起こしている、他の投資家に追随する確率が高い投資家を含むモデルを検証した。それらを参考に我々のモデルをさらに拡張、修正した。 他の投資家を追随する確率が高い投資家として高速取引業者が考えられるが、他の研究では、高速取引は株価形成にポジティブな影響を与えているとの結果が多いが、我々のモデルでは、ボラティリティの上昇により、株価形成を遅らせるという結果がシミュレーション上で確認された。また、ボラティリティの期間構造を説明できる可能性が高いことも今年度の研究から分かってきている。 研究費については、コロナの影響下で経済実験を行うことは効率が悪いため、また、学会の参加についても活発な議論は難しいため、引き続き次年度に繰り越させて頂くことに致しました。基本的にコロナの影響下では極力理論部分を進めさせて頂き、その分、コロナの影響がなくなった後に一気に予算を使った研究を進めさせて頂きたいと考えております。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(A)学習モデルの構築について、当初の逐次取引モデルに対する学習であるベイズ更新によるミスプライスの発生、成長、解消についてはほぼ目途がついている。それに加えて、逐次取引モデルに、他の投資家に追随する確率が高い投資家を加えた拡張モデルにおいて、ボラティリティの期間構造が歪むなど、現実に起きている現象を説明する興味深い結果が得られた。 (B)数値シミュレーションについて、前年度においても、拡張したモデルにおいて価格の収束の遅れは確認できていた。その原因がボラティリティの期間構造の歪みからくるものであることがシミュレーションから分かり、一部理論的に証明することも出来た。 (C)経済実験について、コロナの影響下で経済実験を行うことが難しい状況が続いている。現在の状況では、実験の効率が悪く、被験者もあまり集まらないことが予想されるため、引き続き次年度に持ち越させて頂くことに致しました。 (D)実際の市場データによるパラメータ推定について、(B)でボラティリティの期間構造の歪みが観測されたことにより、それを市場データで裏付けることを中心に研究を進めている現在は無料のデータで予備的に検証を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度、2021年度は、コロナの影響で(A)のモデル構築、(B)のシミュレーションによる検証の時間が当初計画より増えることとなった。その結果、当初の予定よりも逐次取引モデルを拡張することとなり、また、それに応じてボラティリティの期間構造の歪みも説明することができるようになっている。 ボラティリティの期間構造の歪みについては、(C)の経済実験よりも(D)の市場データによる検証の方が重要度が高いと考えられることから、今年度は状況が許せば(C)の経済実験を行い、許さなければ(D)の市場データの購入を先に行う予定である。(現在、無料のデータで検証をしている。) また、今年度は海外での学会発表を予定している。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で経済実験を行うことが困難であり、また、予定していた海外の学会が中止、もしくはオンライン開催となってしまったため、2021年度の使用予定額の全額を2022年度に繰り越させて頂きます。
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