2020 Fiscal Year Research-status Report
Who increase cash holdings and why?
Project/Area Number |
20K01781
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山田 和郎 立命館大学, 経営学部, 准教授 (90633404)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 現金保有 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本企業の現金保有が増加傾向にあることはしばしば指摘される。例えば2018年9月の日本経済新聞には『446兆円 内部留保 6年連続最高』との見出しの記事が1面を飾った。同様の報道においては、現金保有の増加傾向は企業の消極的投資の結果であるとの主張が共になされることが多い。このように現金保有増加が問題視されているものの、申請者の調べたところ、学術的知見を基にして企業単位のデータを用いた精緻な分析は行われておらず、どこに、どのような問題点が存在するのかが十分に検討できていない。 現金保有増加が問題視されているものの、申請者の調べたところ、学術的知見を基にして企業単位のデータを用いた精緻な分析は行われていない。そのために、どこに、どのような問題点が存在するのかが十分に検討できていないのが現状である。それらを踏まえて本研究では上述の報道の情報元である法人統計調査の個票データにアクセスした上で、以下の基本的な問いに答える。問1:どのような企業が現金保有を増加させているのか。問2: 現金保有の増加は、資金調達や投資活動とどのような関係にあるのか。 これらの問いに答えるために本研究課題においては、上述の新聞記事の元になっている企業法人統計調査の個票データをもとに分析を行う。 日本における現金保有に関する論文は調べた限りでは上場企業を対象としたものが多く、未公開企業も含めた広範囲に及ぶものは皆無に近い。冒頭のように現金保有については定期的に実務的にも議論になることから、本研究には一定の貢献があると予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は企業法人統計調査の個票を手に入れたうえで分析を行うために整備を進めた。その際、分析をするにあたって注意すべき点がいくつか存在することを確認した。第1に2010年第1四半期以降は一部サイズの企業の標本設計に変更があることが確認された。事実、同時期に特に中小企業の母集団においてはサンプルサイズが減少していることが確認された。それに伴い分析を行うにあたっては何らかの考慮が対処が必要になる。一方で、地域別、産業別でのサンプルの分布について分析した。2010年の標本設計変更により、地域や産業ごとの分布に与える影響は確認できなかった。第2に企業コードが異なる企業で使い回されていること、さらには同一企業であっても企業コードが変化することが確認された。このことから、一般的なパネルデータでの分析を行うことは困難でり、Pooled-OLS推定での代用を検討している。 同時に上場企業のデータベースについても作成した。具体的にはNEEDSデータセットから財務データを取得した、非財務情報などについてはQuick Factsetから取得した。 そのうえでシンプルな重回帰分析を行った。法人企業統計調査の個票をもとにした結果として規模の小さな企業グループにおいて現金保有を増加させていることが確認された。ただ、同調査では中小企業グループにおいては標本抽出を採用している。そのため、どのグループが最も大きく現金保有を増加させたかを確認するためには、母集団のサイズに掛け合わさなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に整備したデータセットを用いて、詳細な分析を行う。分析手法、変数の選択などは申請者の過去の研究で用いたものをベースにして、さらに直近の研究を反映させて完成させる。多くの先行研究では現金保有の決定要因について、予備的動機、つまり将来の流動性ショックへの備えとして現金を蓄えるとの議論が多くなされる。ここではそのような議論が企業サイズに関わらず該当するかを確認する。さらに、現金保有を増加させた企業群を、母集団のサイズを考慮したうえで確認する。 別途、直近論文の確認を行ったうえで、最新の分析手法などを確認する。 そのうえで、いくつかのセミナーや学会などで報告を行い、コメントなどを得たうえで、論文の改定を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、一部研究プランに変更が生じたため。
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Research Products
(1 results)