2020 Fiscal Year Research-status Report
Rating Information and Solvency Margin Ratio as Indicators for Selecting Insurance Companies
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20K01782
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
徳常 泰之 関西大学, 商学部, 准教授 (20340648)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保険会社 / 格付情報 / ソルベンシー・マージン比率 / 再保険 / 情報開示 |
Outline of Annual Research Achievements |
護送船団行政から脱却し、保険業界に競争原理が持ち込まれるようになって以降、保険契約者にとって破綻する可能性が高い保険会社を忌避し、破綻する可能性が低い保険会社を選択することの重要性が増加している。保険会社が破綻すれば保障サービスが受けられなくなる可能性があるためである。保険会社を選択する指標としての格付情報やソルベンシー・マージン比率の役割を明らかにすることが研究の目的である。2020年度は日本の保険会社における格付情報とソルベンシー・マージン比率の位置づけについて、特に、損害保険会社に焦点を当てて考察を深めていくことを中心に研究を進めてきた。 2020年度の研究実績として、「損害保険会社と格付情報 -再保険と財務的健全性-」(日本保険学会,『保険学雑誌』,第650号,65-84頁 2020年9月ISSN 0387-2939)を発表した。この論文では、1990年代の後半に行われた日本版金融ビッグバン以降、保険業界を含めた金融業界においては規制緩和が進み、競争環境が整備された。その影響を受けて保険会社による情報開示が大きく前進した。本論文では損害保険会社における格付情報の取得、内容と変化に着目し、格付情報が損害保険会社の再保険契約の引き受けに与える影響について分析を試みた。また保険会社の保険金支払い余力を示す指標の一つであるソルベンシー・マージン比率についても同様に分析を試みた。格付情報を用いた分析では、受再保険料または責任準備金を被説明変数にしたモデルともに一定の説明力があった。またソルベンシー・マージン比率を用いた分析でも、受再保険料または責任準備金を被説明変数としたモデルでも一定の説明力があった。格付情報の変化やソルベンシー・マージン比率の変化が損害保険会社の業績に影響を与えている可能性が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は日本の保険会社、特に損害保険会社における格付情報とソルベンシー・マージン比率の位置づけについて考察を深めていくことを中心に研究を進めてきた。研究実績として論文を発表することもできた。保険会社の年次報告書や格付会社の最新の公開情報を収集することも継続して行い、分析に必要なデータベースを作成・更新作業も2019年度(2020年3月期)までの保険会社の業績までは入力が完了している。 新型コロナウイルスの影響で2020年度に参加を予定していた研究会のうち、東京で開催予定であったEast Asia Risk Management and Insurance Workshop(EARMI)は中止となってしまったため出席することができなかった。また、オンラインでの開催になった研究会もあった。アメリカ合衆国・ニューヨークで開催予定であったAsia Pacific Risk and Insurance Association(APRIA)、日本保険学会の全国大会や部会、生活経済学会、保険学セミナー(公益財団法人生命保険文化センター主催)や保険経営研究会(ニッセイ基礎研究所主催)などはオンラインでの参加となった。想定より予算を使う場面が減少してしまったため、予算の執行状況は遅れているが、研究そのものは滞りなく進展している。そのため、本研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究実施計画は、前年度に引き続き保険会社の年次報告書や格付会社の公開情報を収集し、分析に必要なデータベースを作成・更新しておくための期間として位置づける。併せて、格付情報やソルベンシー・マージン比率と保険会社の財務状況や契約状況との関連性を分析していく。今年度は特に生命保険会社に焦点を当てて研究を進めていく。保険会社や格付会社のデータを収集し得られたデータの分析とモデルを構築することを中心に研究を進める期間とし、本研究の中間報告をまとめていく期間として位置づける。 損害保険事業総合研究所、日本損害保険協会、生命保険協会、生命保険文化センター、日本生命文研図書館などで文献収集を行う予定にしている。2021年度に参加予定している主な研究会は、APRIA(オンラインで開催予定)とEARMI(開催地未定)、日本保険学会、生活経済学会、保険学セミナーや保険経営研究会などである。得られた研究成果は適宜、学会などで報告する予定にしている。
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Causes of Carryover |
2020年度に参加を予定していた外国の研究会はアメリカ合衆国・ニューヨークで開催予定であったAsia Pacific Risk and Insurance Association(APRIA)を予定していたが、オンラインでの開催に変更されたため計上していた外国旅費を使用しなかった。また。東京で開催予定であったEast Asia Risk Management and Insurance Workshop(EARMI)や対面での研究打ち合わせは中止となったため計上していた国内旅費を使用しなかった。 2021年度も2020年度と同様に外国への出張は難しいと考えている。APRIAとEARMIについてもオンラインで開催予定もしくは中止になることが見込まれる。国内で開催予定の研究会についても研究会がオンラインで開催予定となっているため、計上している旅費を使用できるかどうかについては先が見通せない状況である。 得られた研究成果をこれらの学会で研究報告するために必要となる英文校閲の経費は引き続き計上しておく。 予算の執行状況にもよるが、自身が作成しているデータベース以外にも外部からデータベースを購入することも検討したい。
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Research Products
(1 results)