2022 Fiscal Year Research-status Report
An Empirical Analysis on Restructuring of Japanese Banking Industry: Merger Gains, Productivity growth, and Optimal Industrial Structure
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20K01783
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
中岡 孝剛 近畿大学, 経営学部, 准教授 (50633822)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 合併効果 / 指向性距離関数 / 地域銀行 / 不良債権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,近年経済学を中心として応用が進んでいるデータ包絡分析(Data Envelopment Analysis,DEA)を用いて,我が国銀行業の再編を定量的に評価することである.本年では地方銀行と信用金庫の合併事象のデータを用いて,合併による生産性変化をスラックベースの指向性距離関数を用いて推定を行なった.分析の結果,不良債権の望ましくない産出として扱った場合と,総貸出額から差し引き,ネッティングした場合の推定結果は異なることが明らかとなり,データ包絡分析のモデルにおいて,不良債権を望ましくない産出として取り扱うことの重要性が示唆される結果となった. また,推定された合併時の生産性変化は,経営破綻による事業譲渡を伴う場合により改善される傾向にある一方で,複数のターゲット銀行が合併する場合には,合併による生産性の改善が見られないことが明らかとなった.この他,合併時の生産性変化は,合併銀行同士の店舗網の重複が大きいほど,より改善される傾向があることが明らかとなった.これらの分析結果は,学会や研究会で発表,ならびにディスカッションペーパー(英文)として取りまとめている. また,合併効果の測定モデルの新しいアプローチとして,Epure et al. (2011)の拡張を試みており,共同研究者と議論を重ねている.モデルの理論的な整合性を確認し,データを用いた検証作業に入ったところである.分析の結果は,データ包絡分析の国際学会で報告予定である. この他,最適産業構造の分析である産業構造効率性のモデル開発作業も同時に進めており,こちらも理論的な整合性が確認でき次第,データを用いた検証を行う予定である. 依然として信用金庫のデータが未整備あるいは未完全であるため,合併事象の観測値は100程度とそれほど多くないが,概ね当初予想していた結果と整合的な検証結果を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
依然として,データ整備の学生アルバイトの確保が十分でなく,信用組合のデータ整備が遅れている.しかし,整備が終了したデータを用いた分析を実施し,学会発表やディスカッションペーパーの発刊などを行うことができており,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究遂行方針としては,まず,執筆したディスカッションペーパーを改良し,海外学術雑誌に投稿する.また,早々に信用組合のデータの整備の完了し,開発した測定モデルを用いた地域金融機関の再編の効果の実証分析を行うことである.また,,最適な産業構造の分析に向けて,産業構造効率性分析(Industrial Structure Efficiency Analysis)を実施し,英文論文の執筆を行う.
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Causes of Carryover |
第一に,データ入力作業のための学生アルバイトの確保がままならず,支出が抑制された点が挙げられる.この問題に対応するため,次年度ではデータ入力業者への外注などを積極的に活用していく予定である.第二に,新型コロナウィルスの拡大による国際学会参加への見送りが挙げられる.次年度については,渡航規制等も大幅に緩和される予定であり,積極的に参加する予定(9月に参加予定)である.
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