2020 Fiscal Year Research-status Report
ヴァイマル期ドイツにおけるマクロ経済分析の発展とヴァーゲマン・プランに関する研究
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20K01792
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
雨宮 昭彦 東京都立大学, 経営学研究科, 客員教授 (60202701)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コブ=ダグラス型生産関数 / 景気循環と景気変動 / ボルヒャルト論争 / ハーヴァード=バロメーター / 価格変動の三系列(先行、一致、遅行) / リベラル・コーポラティズム / 経済の「静態」と「動態」 / 経済の長期トレンド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ワイマール共和国の国家統計局長エルンスト・ヴァーゲマンによって設立された「景気研究所」を拠点に展開されたドイツのマクロ経済の実態に関する調査研究活動と、ヴァーゲマンの貨幣理論・景気変動論の研究を、ヴァーゲマンの最も重要なデフレ対策案であるヴァーゲマン・プラン(1932年1月)との関連の中で、明らかにしようとする。このテーマは、マルクス経済学が大勢を占めてきたわが国では未開拓のまま放置されてきた点で、また、ワイマール共和国の経済政策の可能性と限界を新たな視角から照射しうるという点で重要である。初年度の研究成果は次の3本の論考として公にした(全て単著)。1)「ジャン=バティスト・セーあるいは『二重革命』の時代のエコノミスト」(東京都立大学大学院経営学研究科Research Paper Series No. 25、2020/8)、2)「エルンスト・ヴァーゲマンまたはワイマール期ドイツにおけるマクロ経済学的分析の発展」(東京都立大学大学院経営学研究科Research Paper Series No. 26, 2020/10)、3)「史料:ヴァーゲマン・プラン批判文書――ブリューニング首相宛て請願書(1932 年2 月25 日付)――32 名の大学教授による」(東京都立大学大学院経営学研究科Research Paper Series No. 30, 2021/3)。1)、2)は、ヴァーゲマンと同様に貨幣のノミナリズムの立場に立って経済の長期均衡の観点から生産関数に関する先駆的考察を展開していたセーと対比するならば、ヴァーゲマンは、経済の短期変動を分析する方法を具体的に発展させたことを明らかした。3)は、これまで資料の所在を含めてその内容が不明のままであったヴァーゲマン・プラン批判文書を入手し、その全訳を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3月に脳出血で倒れ5月末日に退院したが、その後は、当初の研究計画に沿って研究を進め、論考を順調に発表しつづけてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)金本位制を維持した条件の下で通貨供給を拡大するための通貨・信用制度改革プラン(ヴァーゲマン・プラン)の内容を、蔵相ルターの「秘密」会議からイギリスの金本位制離脱を経て、ヴァーゲマン・プランの発表へと至る過程の中で、明らかにする。 2)ヴァーゲマン・プランを失墜させることになる重要な社会的要因となったアカデミズムとメディアによるヴァーゲマン・プラン批判の内容を明らかにする。具体的には、32名の大学教授が署名するブリューニング首相宛ての文書、当時の3名の著名なエコノミスト、K.ランダウア―、G.シュトルパー、L.A.ハーンの論考を収めた著書『アンチ・ヴァーゲマン』、そして「ケルン新聞」夕刊紙上に掲載された、大規模なヴァーゲマン・プラン批判キャンペーンなどが主要な分析対象となる。
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Causes of Carryover |
5月まで入院していたことも理由の一端である。2021年度には研究業績の一部の刊行を予定しているので、それに向けた追加研究などに必要な経費として用いる予定である。
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