2022 Fiscal Year Research-status Report
「安全第一、生産第二」の経営史―戦後日本石炭産業の事例
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20K01797
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
島西 智輝 東洋大学, 経済学部, 教授 (70434206)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 石炭産業 / 鉱山保安 / 労働組織 / 労働災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、鉱山保安と労働組織との関係に注目し、三井芦別炭鉱の事例を検討した。とくに、石炭産業独自の職場秩序である、現場職員に対するベテラン鉱員の優位が鉱山保安にどのような影響を与えたのかを分析した。分析にあたっては、北海道芦別市星の降る里百年記念館に所蔵されている一次史料を収集した。先行研究ですでに示されている両者の関係を再確認したうえで、現場職員、ベテラン鉱員双方の属性について可能な限り接近した。その結果、三井芦別では職制とは異なる職場秩序が成立しており、ベテラン鉱員は高い技能を持ち勤勉な一方、現場職員は保安に責任を持つ現場責任者として必ずしも的確ではなかった可能性を明らかにした。そして、重大災害発生の背景に、こうした職場秩序や現場職員の適性の問題があったことを明らかにした。以上の研究を論文にまとめ、公刊した。 また、炭鉱技術者OBらとの協働のもと、太平洋炭砿を事例に、日本の坑内保安技術や機械化採炭技術が、1970年代まで世界で先端的な水準であったことを、採鉱学的、および歴史的な視点から明らかにした。本研究についても論文を執筆し、海外の学術書へ投稿、査読中である 本年度までの研究により、主として技術面、組織面の点から日本の石炭産業が「安全第一、生産第二」の事業を行うようになっていったこと、しかしながらそれは石炭産業が衰退局面に入った1970年代以降であったことを明らかにした。これらは、危険な産業としての石炭産業という特徴を再発見しつつも、それが永続的な特性ではなかったことを明らかにしている点で、従来とは異なる石炭産業史の一側面を示していると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度で研究成果をまとめる予定であったが、予定していた調査が調査先の都合で実施できなかったこと、および海外の学術書への投稿論文の査読結果が2022年度中に返却されず、修正・オープンアクセス手続き等が年度中に完了しなかったため、研究期間を1年延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在取り組んでいる研究成果の速やかな発表に努めるとともに、まだ明らかにできていない経営面での「安全第一、生産第二」の実像を既存収集資料、および追加調査によって分析する。
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Causes of Carryover |
本年度予定していた調査出張が、調査先の都合で行えなかったため、旅費支出がされなかった。また、海外学術誌のオープンアクセス手続き等の費用が査読結果返却遅れのため支出できなかった。以上について、2023年度に執行する計画である。
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