2020 Fiscal Year Research-status Report
日本近世特産物の生産・流通・消費システムの展開と特徴-紅花を事例に-
Project/Area Number |
20K01802
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
岩田 浩太郎 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (30184881)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 特産物 / 紅花 / 化粧品 / 漢方薬 / 輪作 / 消費需要 / 商業的農業 / 奥羽 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1年度(2020年度)は幕藩制期の紅花の消費需要の歴史的展開に関する考察を目的に研究を実施した。交付申請書の「研究目的」では、幕藩期に紅屋であった京都の松屋や紅製造販売をした江戸の伊勢屋、及び近世山形城下で細工紅販売をした丹野家や薬製造・販売をした黒田家の、それぞれ古文書調査を実施する計画とした。このうち、コロナ禍のため、京都・東京への出張調査は全くできなかった。山形市内の調査もコロナ禍による制約があり一部にとどまったが進めた。コロナ禍により計画変更を迫られたことふまえて、第4年度(2023年度)に実施予定とした近世紅花生産農家であった山形県中山町の柏倉家の農業帳簿の調査を代替的に一部実施した。これらの山形県内における調査により、紅花の消費需要のうち口紅など化粧品及び漢方薬としての需要が幕藩後期には南奥羽の各地で広がり山形城下から販売できていたことが判明しつつある。このことは、奢侈品である紅花の需要は中央市場=三都にほぼ限定されていたとする通説とは異なる地方における需要の展開をあきらかにする結果をもたらした。また、紅花生産農家において連作障害が強い紅花の植生をふまえ品質向上のために輪作(換地法)の農法を長年採用し続けた商業的農業の実態に関する論証を精緻におこないつつある。紅花の連作障害対策の農法は農書には記載されているが実際の生産農家で長期間輪作が実施されていたことを論証できたことは研究史上初めての成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は年度当初からコロナ禍のため、全国で緊急事態宣言が発出され、宣言解除後も繰り返される首都圏・関西圏などでの感染拡大により、研究代表者が在住する山形県や勤務校から、県外への出張の禁止ないし自粛が求められた。そのため、上記「研究実績の概要」に記したように、京都と東京への出張調査は全く実施できなかった。代替措置として2020年度及び2023年度に計画していた山形県内の調査を、調査先のご事情もありやはりコロナ禍の制約を受けつつ、一部実施することに努めた。このような予期せぬ制約条件のもと、当初の研究計画の変更が余儀なくされたため、進捗状況は「やや遅れている」を選択した。研究計画の変更にともない、旅費支出の中核として見積もっていた京都・東京への出張調査予算が消化できなかった。また、調査が本格的に展開できなかったことやコロナ禍によるIT関連企業の多忙化による入荷遅延・混乱をふまえて、2020年度に購入予定であったパソコン・プリンターなど設備備品の購入を見合わせた。一方で、代替的に山形県内での調査旅費とそこで調査対象とした古文書撮影従事者への謝金支出を予定よりも増加させた。これらの状況から、2020年度配分額のうち執行残額が90万円余となったので基金扱いであることを事務局に確認して2021年度に繰り越した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は2020年度に実施できなかった京都・東京への出張調査を実施したいと考える。また、2021年度も当初計画において京都への出張調査を予定しているので、あわせて実施したいと考える。2021年度のコロナ禍の状況にもよるが、もしも京都調査が十全にできない事態となった場合には、代替措置として2022・2023年度に予定している各地の調査のうち山形県内など実施可能な地域の調査を先行させるべく計画変更を適宜おこなう。2021年4月現在では山形県・山形市も独自な緊急事態宣言を発出しており、2021年度も出張調査に制約がかかり予算消化も十全にできない事態となれば、最終年度における研究期間1年延長申請も視野に入れた研究計画のさらなる再構築を検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は「現在までの進捗状況」欄に記した通りである。第一に、コロナ禍のため京都・東京など遠隔地への出張調査が実施できず、旅費の中核を占める予定であったその分の旅費を執行できなかったことである。第二に、そのために調査が本格的におこなえず、かつコロナ禍によるIT関連企業の多忙化による入荷遅延・混乱をふまえて、パソコン・プリンターなど設備備品の購入を見合わせたことである。 使用計画については「今後の研究推進方策」 欄に記した通りである。2020年度に実施できなかった京都・東京への出張調査を2021年度におこなう。2021年度のコロナ禍の状況によっては、山形県内や近隣地域など代替できる調査を年度計画よりも前倒ししておこない、その旅費や設備備品費に支出する予定である。
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