2021 Fiscal Year Research-status Report
中国東北都市経済の社会主義体制への移行ー瀋陽都市経済の展開1948-1956年ー
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20K01808
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
張 暁紅 香川大学, 経済学部, 教授 (00452722)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会主義体制への移行 / 瀋陽市 / 都市経済 / 国営企業 / 公私合営 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究成果1:論文の作成について。 これまでのところ、中華人民共和国創成期の工業化の検討を行い、「満洲国」期との連続性と断絶性の両方を重視しながら、①国共内戦下の瀋陽の軍需生産と商工業の回復、②朝鮮戦争を背景とした瀋陽から哈爾濱への重工業企業の移転(工業化の都市間の移動と哈爾濱における重工業化の形成過程)に関する論考2本を完成した。資本主義商工業の社会主義改造の対象者とされた私営工業と個人手工業者に関しては、③「満洲国」期の日系企業の中国系下請企業の戦後における変容、④社会主義改造が私営工業にもたらしたものは何か、といった視点を重視し、論考2本を完成した。上記の論考は、ほかの研究者による研究成果と合わせて、2022年度中に学術書として刊行する予定である。(2022年度学術研究促進費の支給対象者に採択された) 2.研究成果2:資料の利用について。 ①『中華人民共和国経済档案資料』1949-1952年、1953-1957年、各都市の解放記録シリーズ、『中国資本主義商工業的社会主義改造』などの資料の記録を精査し、これらを主軸としつつ、②1946年から1956年までの『人民日報』、『東北日報』などの記事を丁寧に確認して、時局の変化や商工業者の動向、ならびに大量な個別事例を収集・分析できた。③「人民日報図文数拠庫」などの中国のデータベースの利用は本研究のクォリティーの向上につながった。今後の研究においても多く活用したい資料群である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.論文は計画以上の進展状況である。ただ、学術書の形をとって刊行する予定なので、公刊までにはやや時間を要する。 2.パンデミックのため、出入国は規制され、調査地に赴き現地での資料調査はまったく不可能となったことによる影響は大きい。ただ、不幸中の幸い、中国は近年、データベースの構築と公開に力を入れており、一部の公開可能な資料に関しては、オンライン上で閲覧できるようになった。これらの資料を利用することによって、研究をおおむね順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のもとで、これまでは、瀋陽市を事例として、①国営企業の動向を重工業化との展開と関連して、数値に裏付けられたマクロ的動向と個別事例を併用して検討した作業、②私営工業、個人手工業について、生産、流通・販売実態を検討し、戦後の経営回復と社会主義改造が急速に達成された背景を解明する作業、を進めてきた。上述したように、この二つの内容はすでに論考にまとめ上げた。 今後は、これまでの蓄積を踏まえて、研究対象を商人活動と商品流通に移行し、市場が計画によって代替されていくプロセス、政策の下での市場と生産との関係の変化について、特に工業生産とのかかわりを重視しながら、検討する予定である。 最後に、国営企業、私営工業、個人手工業、商人、商品流通などの個別研究で得られた知見を総括して、戦時からの経済回復・重工業化を図りながら、経済体制の再編条件を急速に整えていく中華人民共和国創成期というこの時期の歴史的意義を検討する。
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Causes of Carryover |
1.理由:当該年度は国内外を自由に移動することはできなかったため、資料調査の実施は不可能であった。そのため、出張費、資料調査に関わる費用は残された。 2.次年度は、国内移動制限の緩和が見られたので、国内資料調査を積極的に進めたい。これまで図書館経由相互貸借で、貸出不可の書籍と資料は多数あったので、これらの資料を中心に、東京、京都、札幌などの現地に赴き、資料の閲覧を行う予定である。
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