2020 Fiscal Year Research-status Report
近世イギリスにおける実子徒弟ーギルドの排他的機能と直系家族原理ー
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20K01810
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
米山 秀 東京都立大学, 経営学研究科, 客員教授 (80158542)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 徒弟 / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
イギリス産業革命は世界で最初の産業革命であった。尤も、イギリスではそれ以前に工業化が進行していたことは早くはディーンなどによって指摘されていた。17世紀に一人当たり農業生産性の飛躍的向上により農業従事者が減少し、工業従事者が増加したことも確認されている。しかしそのメカニズムに関しては依然として不明である。こうしたことをハンフリーズは「イギリスの例外性として産業革命期以前の工業化の解明は進んだものの、その工業化がどのようにして達成されたのか、とりわけ労働の農業から工業への移動を促進した制度に関しては注目されてこなかった」とした上で「徒弟制がもたらした重要な帰結は、工業訓練の妨害ではなく促進であり、労働の非農業的職業への転換であった」と徒弟制を重視する。が、ギルドの役割を重視したエプスタインとは異なり「イギリスの徒弟制契約は自律的(self-enforcing)で従って低コストありそこで効率的なトレーニングをした」としている。とはいえ、実際の論証はなく、地方都市の徒弟の比重の比率の大きさだけが示されていた。その後ロンドン史家ワリスも地方都市の徒弟の大きな比重を示している。しかし、その論拠はかつてP.クラークが批判した徒弟登録簿によるものである。 本年はこうした研究状況を整理した上で、徒弟登録簿に反映されない非登録徒弟への非公式的職業訓練の予備的考察をした。次年度は、18世紀のスタンプ条例下の徒弟制も単なる公式的徒弟を反映したものに過ぎないことも示したい。加えて上記ハンフリーズが徒弟制ともに、救貧制度の果たした役割も重視しているので、教区徒弟制における非公式職業訓練も考察していく。その準備として、ロンドンの女性職業労働の実態に関する翻訳を行い、そこにおける非公式的職業訓練との関連を展望した。 これらの徒弟制の実態が直系家族原理とは異なることは見通せるが、論証は次年度以降の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在は主論文のデータを分析中であるが、間もなくその全体が終了し、計画通りと判断している
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Strategy for Future Research Activity |
非登録徒弟の職業の偏りの分析に入り、事実上商業部分が工業に比して多く反映されているという見通しを資料で検証する予定である。そのうえで、イギリスの核家族生徒の整合性を示すことにしたい。
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Causes of Carryover |
依頼したデータの一部が次年度に到着することになったため
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