2023 Fiscal Year Annual Research Report
配置薬産業から医薬品産業への変革に関する研究-長寿企業を中心に-
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20K01832
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
幸田 浩文 東洋大学, 現代社会総合研究所, 客員研究員 (60178217)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本五大売薬 / 富山売薬 / 大和売薬 / 田代売薬 / 近江日野売薬 / 備中売薬 / 組織変遷 / 史的展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍で1年延長した本年度(2023)では、日本五大売薬と称される日本を代表する売薬地域のうちから、富山県の地場産業である医薬品の製造・販売業の代表的企業にまで成長した「株式会社広貫堂」を取り上げた。そして広貫堂の明治期の史的展開について、①明治期における家内制手工業による製薬過程、②売薬への洋薬の受入態勢と業容の拡大、③さまざまな薬事法制への対応策と企業形態の変遷、④海外への売薬進出と事業展開、⑤「有効無害主義」への対策の萌芽といった5つの観点から考察を加えた。 1年度目(2020)では、日本五大売薬の1つである備中(主に現・岡山県総社市周辺地域)売薬を取り上げ、富山売薬の代表薬である「反魂丹」の基になった「延壽返魂丹」の創薬家であり、「配置売薬の元祖」「富山売薬の元祖」と呼ばれる11代万代常閑と富山売薬の関係を明らかにした。 2年度目(2021)では、「日本五大売薬」の史的展開を独自の5つの時代区分により整理した。その結果、五大売薬地域は、明治期の政府の売薬(和漢薬)から西洋薬への転換を目的とする薬事法制の下で、売薬への洋薬の導入、和漢薬の専業化、専門薬剤への特化などさまざまな対応策を講じ現在に至っている。一方、滋賀(近江日野)売薬や岡山(備中)売薬は、時代の要請で製薬会社を設立したものの、あくまでも個別帳主の個人的努力を中心に配置売薬・家庭配置薬の営業にこだわり、近代的製薬会社を組織できなかったことを明らかにした。 3年度目(2022)では、明治期の売薬規制法制とそれに対する富山売薬業界の対応、富山売薬業者が売薬税を緩和・回避するために組織した「富山広貫堂」創設の経緯、結社禁止を契機に誕生した堂号組織「広貫堂」の組織形態、新生広貫堂の成長・発展の過程、「株式会社広貫堂」の組織形態について広貫堂の創設から大正期に至る史的展開と同時期の富山売薬の進展過程を明らかにした。
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