2020 Fiscal Year Research-status Report
企業におけるデザイン機能の組織化と組織変容に関する理論と実践
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20K01839
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
澤谷 由里子 名古屋商科大学, 経営学部, 教授 (60708220)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | デザイン機能 / ラディカルイノベーション / デザイン思考 / 知識創造 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、サービス化・デジタル化によるイノベーション創出と企業競争力の強化のために、 デザイン機能を戦略レベルに高める方法を企業において検討している。イノベーション活動の標準化である ISO56002 イノベーションマネジメントシステム、日本政府によるデザイン経営の推進、企業におけるデザイン思考の導入等、デザイン機能の活用が進められているが、まだその成果が出てきているとは言い難い。企業でのデザイン機能の適応は個人やチームなど部分的にとどまり、戦略レベルで組織を連携し、イノベーション力を高める方法について模索状態である。本研究は、企業が経営および戦略レベルでデザイン機能を活用するための実践に基づく方法論と理論開発を目指すために、企業におけるデザインプロジェクトの議論データを取得し、その流れを分析した。その結果、人間中心デザインにおけるリーダーシップ、特に問題設定と初期のデザイン評価の重要性が明らかになってきた。これらは、同様の研究における評価バイヤス、経路依存に関する指摘と関係する知見である。 また、経営学、イノベーション、アントレプレナー研究において、新規事業開発のプロセス解明に向けた研究活動が盛んになってきており、これ までの技術イノベーションに加えて、デザインにおける認識される価値や新しい意味を創造するイノベーシ ョンについて議論されている。本研究は、サービス学をベースにイノベーション、アントレプレナー、デザイン研究の知見から企業におけるデザイン機能の組織化について理解を深めるために、企業における新しいエコシステム創出のためのワークショップを計画し実施した。その初期の結果を論文として投稿した。また、企業における知識創造をプラグマティズムをベースに位置づけ、R&Dで行われる技術開発に対して、全ての部門で行われる活動としてデザイン活動の提示を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、サービスイノベーション創出のためにデザイン機能を、個人・チームレベルから組織・戦略レベルに導入するための理論開発と実践・検証を目的としている。関連する領域としてイノベーション研究、アントレプレナー研究およびデザイン研究があり、現在後者の2領域を中心に研究の調査を進めている。また、知識創造とイノベーションの関係の論文をまとめる中で、企業資源の動的な変化を考慮したdynamic resource capability、組織変容・統合を促すセンスメーキング、制度化理論との関係を吟味している。イノベーション研究では、 ユーザーイノベーション、オープンインベーション等、企業と多様なアクターから成るエ コシステムの重要性が指摘されている。また、知の活用・探索に関する研究が行なわれ、 人的資本、組織資本および社会関係資本等の企業の資本とイノベーションの関係に関する研究やそれらを統合するデザイン思考に関する研究が進められている。しかし ながら、これらを俯瞰した理論開発は十分に行われていない。デザインを知識創造の活動と位置づけ、その方法によって多様な知識が作られると仮定する。それらとイノベーションとの関係の検証を試みている。 一方、デザイン研究ではこれまでの手法およびツールと いったミクロ的な視点から、それらを活用する組織的な視点に焦点が移ってきた。その中で、企業におけるデザインプロジェクトのデータ分析によって、人間中心デザインにおけるリーダーシップ、特に問題設定と初期のデザイン評価の重要性が明らかになってきた。これらは、同様の研究における評価バイヤス、経路依存に関する指摘と関係する知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、企業を伝統的な競争的閉システムではなく、Service- Dominant Logic による価値共創を起点とした多様なアクターからなる開システムをサービスシステムとして捉え、経営学の dynamic resource capability、センスメーキング、知識創造論、エフェクチュエーション理論等とデザイン学のデザインドリブンイノベーション、意味のイノベーション等を基礎に、企業におけ るデザイン機能の組織化のための理論開発を行う。知識創造論のSECIモデルを基礎にし、0-1と言われる新しい知識や意味が構築されていくための仮説開発と検証を試みる。 また、これまでの研究で大企業におけるエフェクチュエーション事例と、スタートアップの事 例を比較することによって、それらのプロセスの差分を見出した。それによると、企業に おいてエフェクチュエーション・プロセスを適応するためには、人間中心デザインによる プロジェクトの目的再考によって、戦略レベルでデザインを適応することと、チェンジマ ネジメントによる組織変容に注目すべきではないかという仮説が導出された。それらの検証のため当初はデザイン思考を導入している先進企業やスタートアップを中心にインタビュー調査を実施し、先進事例の知見からデザイン機能の組織化のための方法論と評価方法の開発を計画していた。しかしながら、Covid-19の現状もあり、インタビューが難しい場合には公開情報等を中心に行う予定である。
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Causes of Carryover |
多少の繰越がでたが、次年度の研究において論文購入等で使用予定である。
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Research Products
(6 results)