2020 Fiscal Year Research-status Report
モビリティ・イノベーションにおける組織間のネットワーク構造の動的分析
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20K01870
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
伊佐田 文彦 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80387646)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 組織間関係 / 社会ネットワーク分析 / モビリティ・イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,今日の自動車および関連産業における業界構造の変化に伴って,組織の境界や組織間関係がどのように変化しているのかを動的に分析することである。分析手法は,関連する複数の業界にわたる情報を,多年度にわたり,かつ国際的に収集し,テキストマイニングの手法を用いて分析してビッグデータを構築することである。そして,社会ネットワーク分析の手法を用いて組織間関係を分析し,他の諸情報と組み合わせて定量的かつ実証的に因果関係を分析する。研究の目標として,関連諸業界の関係性や階層構造,個々の企業のネットワーク上の位置取りや組織間関係等の変化を明らかにし,変化の要因を考察するとともに,業界全体の健全な成長のための組織間関係を示すことを目指している。 2020年度の研究実績の概要として,まず既存のデータベースを用いて全体を概観するための分析を行うとともに,詳細な分析のためのデータベースの構築および分析に取り組んだ。 既存のデータベースを用いた分析では,本研究の分析対象である自動車メーカーについて,業界の現在の急速な変化を指示すキーワードである,CASE(Connected,Autonomous、Shared & Service、Electric)への取り組みの度合いによって,自動車メーカーと部材メーカー等との組織間関係が変化しているのかどうかについて,分析を行った。 また,詳細なデータベースの構築について,前述のCASEのそれぞれの要素によって,業界構造や組織間関係への影響が異なることが想定されるため,順次データベースの構築と定量的な分析を進めた。2020年度中に,Connected,Autonomous,Shared & Serviceの3つについて,データベースの構築および予備的な分析を実施した。 それぞれの研究成果は,国際学会や国際的な研究会で報告し,更に論文の投稿に向けて準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は主に以下の2つの研究活動を行った。 第一に,自動車業界がCASE(Connected,Autonomous(自動運転)、Shared & Service、Electric(電動化))と呼ばれるような大きな技術変化に直面する中で,それが全体として業界構造や組織間関係に変化を及ぼしている程度を概観した。具体的には,既存のデータベースをもとに,世界の100社近い,大小さまざまな完成車メーカーについて,それらのパートナーシップに関するデータを収集し,社会ネットワーク分析の手法を用いて分析を行った。分析の結果,組織間のネットワーク構造の変化に関する複数の仮説の内,一部が指示され,構造変化が部分的に進展しているものの,抜本的には変化していない可能性が示された。 第二に,さらに詳細な分析として,自動車業界においてCASEの与える影響は,CASEを構成する4つの要素によって,それぞれ異なると想定されることから,それらを分けて順次データの収集,分析に着手した。具体的には,世界の100誌近い新聞記事の過去数年の記事について,テキストマイニングの手法を用いて分析を行い,業界構造や組織間関係に関するデータベースの構築を行った。そして,社会ネットワーク分析の手法を用いた定量分析や,事例研究等の定性分析を進めた。2020年度中に,4つの要素の内,Connected,Autonomous,Shared & Serviceの3つについて,データベースの構築が完了し,予備的な分析を行った。それぞれについて,更に製品やサービスの種類別,地域別等の分類を行いつつ分析した結果,組織間関係が全体として一律に変化しているわけではなく,大きく変化している領域と,変化していない領域がある可能性が示唆された。 なお,上記はいずれも国際学会や国際的な研究会で報告し,更に論文の投稿に向けて準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として,特に2021年度は以下の2点を進める。 まず,2020年度に収集したデータベースに基づいて,詳細な分析を行うことである。2020年度においては,主に,業界全体の動向についてのマクロ的な定量分析を実施し,業界構造や組織間関係に関するいくつかの変化の兆候を観測できた一方で,従来からの自動車業界の構造も維持されていた。そこで,それらの要因を分析するために,更に類型化や事例研究などを行い,因果関係の探索を行う。 また,分析用のデータベースの構築について,残っているElectric(電動化)に関する調査を進める。電気自動車に関する状況の変化は特に海外において近年急速に増加しており,業界構造や組織間関係の変化が観測されることが期待できる。
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Research Products
(21 results)