2020 Fiscal Year Research-status Report
起業機会認識・実現に対する起業家ネットワークの構築・解体プロセスとその影響
Project/Area Number |
20K01875
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
高島 克史 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (60463759)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 起業家 / 利害関係者 / ネットワーク / 批判的実在論 / アクターネットワーク / 起業機会 / ケーススタディ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「起業家と利害関係者とのネットワーキングの構築・解体」と「それらを通じた起業家と利害関係者の認識枠組と行動の変容」といった観点から起業機会の認識・実現プロセスを明示することである。本研究を遂行するために、批判的実在論やアクターネットワーク論などを参照しながら進めていく計画である。 2020年度は、主に文献研究と資料データの整理を行った。文献研究では、まず批判的実在論やアクターネットワーク論をベースとしながら先行研究の整理を行った。ここでは、起業家を中心に先行研究が展開されてきたことを批判的に考察した。すなわち、既存の起業家研究やアントレプレナーシップ研究は、「起業家自身」や「起業家とそれを取り巻く諸環境」に注目してきた。そこで主に指摘されてきたことは、起業家が自ら起業機会を発見実現するということである。そのため、あたかも起業機会を発見実現できるのは起業家であり、利害関係者の役割は起業家をサポートするという点以外、ほとんど注目されていなかった。 しかし、起業家とそれを取り巻く利害関係者との関係性という観点からみれば、必ずしも起業家だけが起業機会を発見実現しているわけではない。時として、利害関係者が初めに起業機会に気づくケースやそれを実現するためのツールやスキルに気づくケースもあることを指摘した。 ここで指摘した論点は今後検証するためにケーススタディを積み重ねていく必要がある。そこで2020年度はケーススタディを行うため、資料データの整理もおこなった。これまでインタビューしてきたデータを文字化し、検証を行う準備を整えた。ただ、起業機会の発見実現には多様な主体がかかわっており、そのプロセスも複雑である。今後もケーススタディを積み重ねていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、アクションリサーチやインタビュー調査といった対面方式の調査を前提としている。ただ2020年度は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、対面方式での調査に大きな制約があった。それに加えて、調査対象としていた起業家やその利害関係者も新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応で多忙を極めており、インタビュー調査ができるような状況になかった。当初予定していたインタビュー調査ができていないことから、研究の進捗状況は遅れているといわざるをえない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究も基本的にはアクションリサーチやインタビュー調査といった対面方式での調査研究を行う予定である。ただ2021年度もどこまで対面方式で調査ができるか不透明である。そのため2020年度と同様の状況を想定し、必要に応じてオンラインでのインタビュー調査も実施する。 ただしこれまでの調査から、本研究対象者の中にオンラインでの調査も難しいケースが含まれている。そのような場合は、文書や電話を使った調査を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い予定していたインタビュー調査を行うことができなかったことが理由である。 今後は、新型コロナウイルス感染状況を注視しながら、インタビュー調査をこまめに実施する予定である。必要に応じてオンラインでのインタビュー調査を積極的に活用する予定である。
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