2020 Fiscal Year Research-status Report
Research of the requirements for establishing open innovation in Japanese agriculture
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20K01889
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
野津 喬 早稲田大学, 理工学術院(環境・エネルギー研究科・環境総合研究センター), 准教授 (90738410)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 知的財産法 / 新品種開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初、本研究では公的研究機関が企業等の外部機関との連携により研究開発を行ったプロジェクト事例を対象とするインタビュー調査を実施し、詳細なケーススタディを行うことを予定していたが、新型コロナ禍によりインタビュー調査の実施が困難となった。一方、本研究の主たる分析対象である農産物新品種開発に関連する知的財産制度である種苗法について、今年度(2020年度)に大きな制度変更がなされた。今年度はこのことに着目して、本法改正の影響、特に農業者の自家増殖に関する改正の影響について、経済モデルを用いて法的観点、経済的観点の双方から複合的な分析を行い、以下の点を明らかにした。 ・品種登録されていない品種、以前は品種登録されていたが権利が失効した品種は、法的要因により法改正の前後どちらも自家増殖が可能。 ・公的機関が中心となって育成している稲、麦、大豆などの食用作物は、法改正前も政策的観点から育成者権許諾料が低廉であること、また産地ブランド維持のために自家増殖が行われておらず、この状況は法改正後も変わらないと予想される。 ・民間企業が中心となって育成している野菜は技術要因(F1品種)により、法改正の前後どちらも自家増殖は不可能。 ・公的機関が中心となって育成しているいちごや果樹は、法改正前も政策的観点から農業者に対しては自家増殖を許可しつつ育成者権許諾料が低く設定されている場合が多く、この状況は法改正後も変わらないと予想される。 ・民間企業が中心となって育成している花きや鑑賞樹は、法改正前も育成者権者と農業者が自家増殖を制限する契約を締結する慣行が定着しており、法改正後も実質的な状況は変わらない。また省令で定める396種類の栄養繁殖植物は改正前の種苗法ですでに自家増殖に対して育成者権の効力が及んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初、本研究では公的研究機関が企業等の外部機関との連携により研究開発を行ったプロジェクト事例を対象とするインタビュー調査を実施し、詳細なケーススタディを行うことを予定していたが、新型コロナ禍によりインタビュー調査の実施が困難となった。一方、本研究の主たる分析対象である農産物新品種開発に関連する知的財産制度である種苗法について、今年度(2020年度)に大きな制度変更がなされた。このため今年度は、本法改正の影響、特に農業者の自家増殖に関する改正の影響に着目し、法的観点、経済的観点の双方から複合的な分析を行った。 次年度は新型コロナ禍の影響を見つつ、当初予定していたオープンイノベーションによって研究開発を行ったプロジェクト事例を対象とするインタビュー調査を実施したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、前年度に新型コロナ禍の影響で実施できなかったオープンイノベーションによって研究開発を行ったプロジェクト事例を対象とするインタビュー調査を実施していく。なおその際、当初主たる分析対象として想定していた農産物新品種開発に加えて、再生可能エネルギー事業についても分析を行っていきたい。理由は以下のとおりである。 前年度、文献調査などを進めた結果、農山漁村における新事業の代表例の一つとして、再生可能エネルギー事業が注目されていること(農林水産省,2012)、一方で新規性の高い取り組みである再生可能エネルギー事業を農業者が実施しようとする場合、解決すべき課題が多岐にわたり、事業実施まで至らないことも多い(農林水産省,2015)ことを把握した。本研究のテーマである「日本農業におけるオープンイノベーションの成立要件とは何か 」を分析するにあたり、複数の研究領域について分析することは有意義と考えられることから、本年度は再生可能エネルギー事業についての分析も行っていきたい。
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Causes of Carryover |
本年度は研究者が所属を異動して新たに研究環境を立ち上げる必要があったこと、また新型コロナ禍により出張が出来なかったことから、支出は物品費が中心となった。次年度は新型コロナ禍の状況を踏まえつつ、旅費を中心として支出を行っていく予定である。
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Research Products
(2 results)