2021 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な社会を真に実現するESG経営ー新たな評価フレームワークの構築と提言ー
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20K01896
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
足立 光生 同志社大学, 政策学部, 教授 (90340215)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 気候変動 / TCFD / SDGs / ESG |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、急激な気候変動が社会に大きな影響を与えている。そうしたなか気候変動への対応の一つとして、リスクと機会に関する積極的な情報開示が企業にも求められている。こうした企業の情報開示にとって、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)最終提言の影響は大きい。また、企業が当提言の趣旨に沿って、的確な情報開示に取り組むためには、政府をはじめ各種機関による支援体制も必要とされよう。また、的確な支援体制のもとで、企業が移行リスク(Transition Risks)と物理的リスク(Physical Risks)に積極的に取り組むことが、該当企業の株式市場における市場リスク低減につながることも想定される。そこで本研究では2つの事例を対象として、株式市場における変動をHL比率(High Low Ratio)から推測することで、企業のTCFD最終提言に沿った情報開示への取り組みとそのリスク低減効果について検証する。最初に、環境省主催のTCFDに関する支援事業の事例を取り上げ、参加が決定した企業の株式市場を対象として予備的な検証を行う。次に、国土交通省による不動産分野におけるガイダンスの公表事例を対象として、TCFD最終提言に沿った情報開示への取り組みが不動産分野の企業の株式市場に及ぼす影響を検証する。具体的にはこのような取り組みがHL比率のレジーム転換を誘引した可能性について、マルコフ・スイッチング・モデルの事後確率を抽出して検証を試みた。検証の結果としては、企業のTCFD最終提言に沿った情報開示への積極的な取り組み姿勢が市場リスク低減効果につながる可能性を示唆するものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究の開始時期(2020年4月)から新型コロナウィルス感染症拡大が始まり、2022年5月の現時点においてもいまだ収束していない。そのような感染症拡大の影響は、当研究にも色濃く出ていることは確かである。たとえば、コロナウィルス感染拡大の前に研究計画のなかで予定した実務家へのヒアリング調査等はいまだ厳しい状況にある。ただし、そのような調査については、今後の感染症の収束状況に応じて機動的に取り組みたいと考えており、その準備に余念がない。そうした点において現在までの進捗状況を総括すれば、予期せぬ感染症拡大により研究の方法自体は大きく見直されることになったが、それでも研究を俯瞰してみれば「(2)おおむね順調に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上で述べたように、2020年4月の研究の開始とともにコロナ感染症拡大が展開したことから、当初の研究計画について見直しが必要とされたものの、そのような影響によってたとえ少々遅れても、当初提出した研究計画を今後も着実に行っていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(B-A)欄が「0」より大きい理由については、当年度においても新型コロナウィルス感染症拡大が一向に収束せず、移動制限がかかっており、当初研究計画のなかで予定されていた実際のヒアリング調査等ができなかった点にある。またそれに伴い、それに付随する物品費の支出も遅れたことにある。今後新型コロナウィルス感染拡大の収束に伴い、機動的に研究費を使用して研究を深めることができるよう努力していきたい。
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Research Products
(1 results)