2020 Fiscal Year Research-status Report
顧客の行動履歴情報活用能力における情報倫理の戦略的意義の解明
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20K01899
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
古賀 広志 関西大学, 総合情報学部, 教授 (20258312)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 顧客情報 / 組織能力 / ビッグデータ / 情報倫理 / 社会物質性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の経営情報システム研究では、技術と組織を峻別するのではなく、利用しつつ開発する中で、実践的課題を見いだし、修正を繰り返していくことの重要性が改めて注目されている。このような立場は「社会物質性」と呼ばれる分析アプローチと呼ばれる。言い換えれば、情報システムは、技術的人工物であると同時に社会的人工物であることから、社会的かつ物質的な存在であると考える立場である。 社会物質性の分析アプローチに立脚すれば、顧客の行動履歴データを蓄積し活用できるようになったことから、顧客情報活用能力が行為遂行的に形成されるようになってきた。このとき、IT人工物は、価値中立的ではなく、社会的人工物であることから、IT人工物の設計や利用に価値観が注入される場合がある。その結果、組織文化や価値観を可視化させる道具と言える。しかも、AIを活用したIT人工物は、分析過程のブラックボックス化が助長されるために、目に見えない形で価値の注入がなされる可能性がある。そこで、本研究では、従来のIT人工物とAI人工物の概念上の相違、AI人工物に対する意識調査、価値注入の事例として「表計算ソフト」の組織的活用の罠、スマートフォンのアプリの事例分析などに取り組んできた。これらの個別の成果については、国際会議で報告することができた。また、AI人工物に対する意識調査は(日本とスウェーデンの比較調査として実施したものである)The Review of Socionetwork Strategiesに掲載が決定した(査読付:国際共著)。以上のように、研究実績を積み重ねることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国際会議での報告(オンライン開催)を3件、査読されたアブストラクトをもとに執筆したフルペーパーが掲載された予稿集論文を3本、さらに、AIに対する意識調査に関する論文(国際共著論文)が4月に発刊された。これらの点を鑑みれば、本研究は、当初の計画以上に遂行できたと考えられる。もちろん、コロナ禍の影響は少なくなく、国際会議はすべてオンライン開催になったことから、会議期間中の研究交流などを十分に実施できなかった。この点を割り引いたとしても、本年度の研究遂行は計画以上に進んだと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
AIに対する意識調査(国際比較)の結果をもとにAI人工物の概念枠組を策定していきたい。また、スマートフォンアプリにおける個人情報活用の現状と課題について事例研究を行っていく。そして、最終年度に開催される国際会議で報告できるように準備を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
国際会議(APCIM:台湾、HCC:東京)、学会の全国大会などがオンライン開催となったことから旅費などとして計上していた予算の執行が困難になったため、使用額に差違が生じた。
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Research Products
(12 results)