2022 Fiscal Year Research-status Report
ベトナム鉄鋼業における外資企業の適応的市場創造と社会的受容:後発性利益実現の条件
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20K01905
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川端 望 東北大学, 経済学研究科, 教授 (20244650)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ベトナム鉄鋼業 / 日本鉄鋼業 / 中堅企業 / 海外進出 / 技術移転 / 市場創造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,新型コロナウィルス感染症の流行が次第に軽減されたことに伴い,ようやく本格的に調査・研究を行うことができた。1)スパイラル鋼管製造企業のサプライチェーンについて国内拠点とベトナム拠点を比較する論文を公表した。スパイラル鋼管についてのベトナムでの市場創造の進捗とその限界を具体的に解明できた。2)事例研究の対象企業を共英製鋼グループに絞り,対象時期を1990年代以降と改めて設定し,社史,社内誌等の資料を系統的に収集し,読み込みを行った。3)共英製鋼株式会社のベトナム進出経過についての本社ヒアリングを2回にわたって実施した。ヒアリング結果は,非公開の調査記録2点(約4万8000字)として整理した。4)ベトナム鉄鋼業の現状と,共英製鋼グループの事業展開について現地調査を実施した。事前のアポイントメント取り,質問状の作成には1か月以上を要し,実際の調査は10日間(ベトナム滞在9日間)にわたった。ベトナム南部,北部にまたがる12事業所でインタビュー・工場見学調査を行い,結果を非公開の調査記録(約6万5000字)として整理した。 これらの調査結果により,共英製鋼グループのベトナム進出の背景,事業展開の経過,技術移転と市場開拓に関する事実関係を,公表資料だけでは明らかにならない貴重な部分を含めて把握できた。そして,これらを調査報告書にまとめたことにより,事業展開の時期区分と特徴,理論的・実践的意義についての分析を進めることが可能となった。そして,研究期間の1年間の延長を受けて,研究を完成させて学会報告・論文公表を行う展望が開けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症の流行が徐々に沈静化したことに伴い,国内と,何よりもベトナム現地での調査活動が可能となった。また,事例研究の対象を共英製鋼グループに絞り,延長1年を含む研究期間中に研究を完結させるべくスケジュールの見直しを行った。そして本社でのヒアリング調査,ベトナム現地でのヒアリング・工場見学調査を順調に進展させることができた。これによって,昨年度までの研究の遅れを相当程度挽回できたが,なお成果の学会報告・論文での公表には至らず,研究期間の1年延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に,研究計画を見直すとともに,本社ヒアリング,およびベトナム現地でのヒアリング・工場見学調査を行ったことにより,研究の遅れをかなり取り戻すことができた。研究期間延長による最終年度に,調査結果の分析と考察,論文の作成に専念することによって,研究成果を上げることが可能である。具体的には,アジア経営学会全国大会にて研究報告を行ったうえで,学術論文2本を作成して学術誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は現地での実態調査を必要とするものであり,新型コロナウィルスの流行により計画遅延のやむなきに至った。研究対象を絞り込んだうえで,本来の最終年度である2022年度に,当初2021年度に予定していた実態調査をようやく実施することができた。しかし,本来2022年度に予定していた研究成果の取りまとめと発表には至らず,期間延長の上,2023年度にこれを執り行うこととなった。研究成果の取りまとめと発表にかかる経費は2023年度に執行する。具体的には,補足的な資料購入,補足的な国内調査旅費,学会発表旅費,学会参加費を予定している。
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