2023 Fiscal Year Annual Research Report
組織と歴史の相互構築メカニズムの研究―3Mのオーガニゼーショナル・ビカミング
Project/Area Number |
20K01910
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
伊藤 博之 大阪経済大学, 経営学部, 教授 (20242969)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 3M / オーガニゼーショナル・ビカミング / ウィリアム・マックナイト / オーガニゼーショナル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国3M社を事例として、オーガニゼーショナル・ヒストリーの一領域となるオーガニゼーショナル・ビカミングに関する組織理論構築を試みることを目的とした。研究戦略の根幹としては、米国ミネソタ歴史協会に寄贈された3M社の社内資料を分析することを計画した。 一方、研究開始と同時期にコロナの感染が拡大し、その後も変異種出現による行動制限は2022年度まで続いたことで、渡米計画を継続的に中止せざるをえなくなり、米国での資料収集を結果的に断念する結果となった。 そうした事態に対して、一般的に入手可能な資料に加えて、3M社のデラウェア州会社法人登記後発行されたすべてのアニュアル・レポートを収集し、同レポートの分析を軸に据えた同社の企業成長分析に研究焦点をシフトさせた。特に、アニュアル・レポートを使用することで、事業変化の具体像が判明するとともに、組織構造、財務状況、工場設置状況、M&A実施状況の変遷など、既存の3M社研究では不明であった諸データを分析に含めることが可能となった。また、今年度の研究成果としては、ビジョナリー・カンパニーを構築した経営者の代表例とされる同社中興の祖、ウィリアム・マックナイトの社長時代の経営に関して具体的なデータに依拠した分析を進めた。 研究期間全体を通した3M社研究に対する新発見としては、同社のイノベーション経営の起源は、マックナイト社長時代の世界恐慌の影響があり、祖業である研磨材事業の不振を補うための多角化があったこと、その時期から同社はM&Aを積極的に展開してきたことなどがある。一方、オーガニゼーショナル・ビカミングの観点から注目すべき点は、3M社がイノベーションにより同社のアイデンティティを定義したのは1980年代に入ってからであり、それは、同社の潜在的成長率の低下への対処を意図した経営改革の一環と理解できる点である。
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