2021 Fiscal Year Research-status Report
企業家的技術移転人材を支える産学連携組織のあり方に関する研究
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20K01913
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高田 仁 九州大学, 経済学研究院, 教授 (70363314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 功一 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (40510409) [Withdrawn]
松橋 俊彦 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター, マネージャー (60543923)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 技術移転人材 / 企業家 / 心理的資本 / ナレッジ・マネジメント / SECIモデル / 知識創造 |
Outline of Annual Research Achievements |
大学発技術の商業化では、企業家的な精神と技能を発揮する技術移転人材(Technology Transfer Professionals ; TTP)が重要な役割を担うが、そうした企業家的TTPを活かしうる組織的要件の解明は不十分であり、本研究はこれを実証的に明らかにするものである。 2020年度は、企業家的TTPの姿をより的確に把握するために、TTPの心理的資本と職務遂行能力との関係について調査・分析を行い、自己効力感と複雑な業務への挑戦意欲の関係性や、組織的なレジリエンスの高さがTTPに与える影響などを命題として抽出整理した。 これを踏まえて、2021年度は、国内技術移転機関で長くトップクラスの業績を出し続ける東京大学TLOの組織マネジメントに着目し、複雑で難易度の高い技術移転業務では、個人の暗黙知を組織的な形式知へと変換させる知識創造活動が効果的な人材育成に寄与しうるとの仮説を立て、調査を行った。具体的には、同組織のナレッジマネジメントの現状について、社長ならびに複数のマネジャー、さらには新人を対象に、1人あたり1.5時間以上の半構造化インタビューを行い、人材育成手法について定性的に分析した。 調査結果をSECIモデルに基づき分析した結果、同組織では、メンターシップ制度や創発の場によって個別知識の共同化が進むとともに、定例会議で個別知識の形式知化が促進されていた。また、あらゆる多様な提案を対象に全社員の合議により実行を決定するCKP(CASTI Kaizen Program)制度や、年間を通じた各自の代表的な活動成果を共有し表彰するCIS(CASTI Innovation Contest)制度などによって、ナレッジマネジメントのプロセスをサイクルとして回しながら、人材育成に効果的に役立てていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、大学の産学連携組織が企業家的技術移転人材(TTP)を活かしうる組織的要件をEO(Entrepreneurship Orientation)の観点から明らかにしたうえで、全国の大学の産学連携組織を対象としたアンケート調査によって、EOの構成要素やマネジメント層のリーダーシップなどの組織変数情報を網羅的に収集する予定であった。 しかしながら、前年度に企業家的TTPの姿を心理的資本も含めて把握し、それを踏まえて、今年度は個人の暗黙知を組織的な形式知へと変換させる知識創造活動が効果的な人材育成に寄与している可能性を明らかにするため、東京大学TLOの事例分析を行った。本分析においては、組織力向上のために、如何に動機付けを行うかという新たな課題も見えてきた。また、全国の大学の産学連携組織を対象とした調査にまでは至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで本研究者らは、高業績の企業家的TTPの行動様式がエフェクチュエーションの概念で説明できること、それらTTPの思考様式には心理的資本の蓄積が寄与していること、更には、個人としてのTTPの心理的資本の蓄積には組織的な知識創造活動が効果的に寄与しうることを、事例分析を通じて明らかにしてきた。 以上を踏まえて、今年度は、TTPが業務経験を通じて心理的資本を構築することや、組織的な知識創造活動がTTPの人材育成に寄与しうることについて、国内複数の産学連携組織へと調査対象を広げて分析を進め、さらに、組織としてのパフォーマンス向上に寄与する動機付の課題に取り組む。 最終的には、技術移転組織が高業績をあげるためのマネジメントシステムのあり方や、組織の企業化指向性(EO)との関連を明らかにし、今後の我が国の産学連携組織の組織設計やマネジメントのあり方について提案することを試みる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって、訪問インタビューが遠隔インタビューに切り替わったため。加えて、発表を予定していた国際学会がコロナによって2年間延期となったため。今後、コロナ感染状況に留意しつつ対面のインタビュー件数を増やすとともに、国際学会への参加と発表を行う計画である。
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Research Products
(1 results)