2022 Fiscal Year Research-status Report
プラグマティックな価値評価と市場メカニズム―遂行性とネットワーク分析による実証
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20K01916
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
中野 勉 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (10411795)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プラグマティックな価値評価 / ネットワーク / クリエイティブ・インダストリー / ハイエンド・オーディオ / デジタル化と認知 / アクターとオブジェクト / 市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究は、欧米の経済社会学で研究が進む「プラグマティックな価値評価 」(pragmatic valuation) の方法に、ネットワーク関係性の概念を導入し、実証から市場メカニズムの理論化を進めるものである。製品やサービスの価値はモノ自体に内在するのではなく、アクターである個々の消費者が、オブジェクトとインタラクトし、その価値を認知する行為にあると考える。遂行性と関係性を応用し、マイクロからマクロへの市場の理論化を目指す研究であり、音に関するビジネスであるハイエンド・オーディオ市場においては、 オーディオ・メーカーのエンジニア、マニア、プロの評論家が、技術論からの計量に加え、定性的かつ実践的な評価のディバイスを多角的に応用して、多義的に音を評価する。フィールドワークでのインタビュー、文献調査、エンジニア・評論家・編集者・プロショップのオーナーへのインタビューなどからの内容分析から、コミュニティの合意が組織化されるプロセスの解明を続けている。新型コロナの広がりで、対面でのインタビューが難しくなるなかで、オンラインのコミュニケーションにより、インタビューや文献整理を続けた。成果として、研究代表者は、2023年に Cambridge University Press から出版予定の Geiger, S. et al eds. Market Studies の1章として、単著論文“Pragmatic valuation of the analog high-end audio: Monsters missing in the digital marketization”を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この間は、新型コロナの広がりで、本務校である青山学院ビジネススクールでは、授業のオンライン化、及び、対面とライブでの学生とのインタラクションを同時に行うハイブリッド化を進めており、その準備と実践のために、対話型やグループワークを多用する社会人MBA教育に多くの時間と体力が奪われることとなった。研究代表者にとっては、個人的にはリサーチの時間の確保に大きな影響が出ている。また、多くの市場やビジネスに多大な影響が出たことと同時に、対面でのフィールドワークやインタビューが難しくなった。そのため、ネットワークづくりと研究環境づくりに多くの時間とエネルギーを費やした大変な一年となった。コロナの終息により、海外渡航が可能となり、海外での学会発表の機会を探る。
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Strategy for Future Research Activity |
ようやくコロナの終息が見えた中で、研究代表者は、スタートアップ企業のコミュニティ、音のビジネスに関係するプロフェッショナルのコミュニティを追っている。コロナとネットワークの変遷の視点からは、大規模イベントや集客における効率性を求められない状況で、音に関するビジネスなどクリエイティブ・インダストリーにおいて、オンラインと対面を組み合わせ、アクターがどのようにビジネスを再構築するのかが、今後の重要なトピックとなるが、文化とテクノロジーが交錯する中で、様々な変化もみられる。今後どのような新たなビジネス・モデルを作り出すのかは大きな社会課題であり、製品やサービスとしてのオブジェクトへのアクターの認知、遂行性からの解釈と 再定義、ステークホルダーによるネットワークの組み換えについて、デジタル化への市場の変化についても、アカデミックなリサーチを展開する。学術雑誌への単著論文の投稿を積極的に行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で、海外渡航が現実的に不可となり、海外での学会発表ができず、オンライン形式になり、予定していた旅費の使用がなくなった。また、オンライン化とデジタル化が進み、コロナの影響が長引く中で、インタビューや情報収集、学術的なディスカッションもオンラインへの比重が高まり、それらに必要は機材の購入などが増えた結果物品費が当初計画より多くなった。コロナもようやく終息しつつあり、来年度は海外での活動を再開する予定であるが、旅費や宿泊費の高騰への対応として、準備金が必要となる。
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Research Products
(2 results)