2021 Fiscal Year Research-status Report
グローバルネットワークとしての総合商社における組織デザインの研究
Project/Area Number |
20K01932
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
大石 直樹 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (00451732)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 総合商社 / 組織デザイン / ネットワーク / 人的資源配分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国内外の市場において、膨大な種類に及ぶ商品取引の遂行するために張り巡らされたネットワークをもつ総合商社が、直面するリスクを、いかにしてマネジメントしながら、同時に、取扱商品や進出エリアの増大に伴う膨大な費用を抑えることで、どのようにして巨大なネットワーク組織を管理する仕組みを構築しながら、効率かつ安定的な商品取引を実現していたのかを、戦前の二大商社である三井物産と三菱商事が選択した異なる2つの方法に注目しながら、それぞれの組織のあり方について解明するものである。 研究期間2年目にあたる本年度は、両社の異なる組織デザインの違いが、総合商社の競争力を決定する要素として、これまで多くの先行研究が注目してきた人的資源配分において、いかなる差異をもたらすことになったのかというテーマについて検討を行うべく、両社の人材に関する様々な情報の収集および分析を行った。具体的には、毎年刊行されていた両社の社員名簿を用いて、各拠点のトップ(部長や支店長など)のキャリアパスの解明を行った。また三井物産については、社員名簿に記載されている社員の月給データから、昇進・昇給ルートに関する情報についても検討を行った。 また、既に収集していたアメリカ国立公文書館(アーカイブズⅡ)と国立公文書館つくば分館が所蔵する商社の接収史料を用いて、アメリカおよびオーストラリアの支店資料を分析することで、三菱商事と三井物産の海外支店における人事異動の特徴についても検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの影響で、国内の文書館・資料館での調査はもとより、渡航が困難な状況であるため、アメリカ国立公文書館(アーカイブズⅡ)での資料調査ができなくなったという点で、計画通りの進捗状況であるとはいいがたい。また、本研究の推進にとって重要となる三菱商事・三井物産のオーストラリア支店の資料を所蔵する国立公文書館つくば分館の運用方針が変更したことに伴い、同館での所蔵資料の調査が行い得なくなったことも、当初の研究計画からは予想外の事態であった。 そのため、当初予定していた研究スケジュールからは、やや遅れている状況は否めず、調査が可能な国内の資料館での調査と、既に収集済の資料を用いることによって、基本的な分析作業を進めることとなった。 現在までの具体的な進捗状況としては、これまでに、(1)三菱商事と三井物産の組織デザインの骨格である各種ルールによって構成される組織編成原理の比較分析、(2)両社それぞれの組織デザインに規定された人的資源配分のあり方に関する比較分析、(3)両社の商品取引の特徴が、それぞれの組織デザインをいかに反映するかたちで展開されたのかに関する比較分析、などについては検討を行うことが出来た。 また、本年度は(4)総合商社の組織デザインの特徴を明らかにする上で参考となる専門商社の組織デザインについても、分析を着手した。具体的には、三井物産から分離独立した東洋棉花と日本綿花の2社について、組織編成原理と人的資源配分の分析に必要となる情報収集を行うことが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、戦前日本の総合商社を、グローバルネットワークと見做し、その編成原理を明らかにすることで、リスクの高いビジネスをいかにマネジメントしながら、ネットワークを管理し、機能させていたのかを解明することであり、主要な商社の比較分析を行うこととなる。 研究期間2年目までに、戦前期2大商社である三井物産と三菱商事の組織デザインの骨格部分に関する比較分析を進めたため、3年目以降は、専門商社の組織デザインを分析することで、総合商社の組織デザインの特徴を、より体系的に明らかにしていく作業を進めていく予定である。具体的には、三井物産から独立した東洋棉花と日本綿花を分析対象に加えることによって、総合商社と専門商社の経営組織・経営行動を比較する分析を進める。 また、本研究の推進に不可欠となる国内外での資料調査の実施については、新型コロナの感染状況に大きく左右されることととなるため、現時点では予測できない部分もあるとはいえ、研究期間3年目にあたる2022年度は、過去2年間行えていない、アメリカ国立公文書館(アーカイブズⅡ)での資料調査を実施したいと考えている。 また、アメリカ国立公文書館での調査が行えなかった場合においても、これまで行ってきた資料調査の蓄積に加えて、国内の公文書館および企業史料館での調査は、実施可能であるため、計画的に作業を進めることで、本研究課題の推進に支障が出ないよう工夫していきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
本研究は、戦前期の総合商社の組織デザインに関する歴史研究であり、分析に際して資料調査を行い、そこで収集した資料をもとに分析を行っていくスタイルである。しかし、新型コロナの感染拡大によって、国内での資料調査はもとより、海外での資料調査を行うことが実質的に不可能となった。特に、当初の計画では、膨大な戦前期の商社資料を所蔵するアメリカ国立公文書館(アーカイブズⅡ)での調査を実施する予定であったが、2020年度に続き、2021年度も一度も行えなかったために、経費の支出がかなり少額にとどまり、次年度に繰り越すことを余儀なくされている状況にある。 2022年度は、新型コロナに対する公文書館の対応についても状況の好転も期待されるため、予定通りの調査実施を予定している。
|