2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K01935
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
延岡 健太郎 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90263409)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | SEDAモデル / アート思考 / 生産財 / イノベーション / 費用対効果 / キーエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研プロジェクトの前半(2021年度まで)に、SEDAモデル(Science, Engineering, Design, Art)の概念的なフレームワークを完成させた。同時に、消費財については、実証研究を進め、2021年に「アート思考のものづくり」として、出版した。2022年度は、SEDAモデルを生産財企業へ応用するための実証研究を積み重ねた。その成果として、2023年3月に「キーエンス 高付加価値経営の論理」(日本経済新聞出版)を出版した。 本書で主張した研究結果の要点を簡単に説明する。まずは、SEDAモデルの目標であるイノベーションとは、付加価値額(≒総利益)を創出することである点を明確にした。キーエンスは、付加価値(イノベーション)を最大化することを、企業哲学として目標に掲げてきた。 付加価値を最大化するためには、生産財では特に、顧客企業の利益を最大化するためのソリューション提案が鍵を握る。つまり、SEDAモデルの中では、機能的価値(ScienceとEngineering)ではなく、意味的価値(DesignとArt)が重要なのである。顧客が企業であれば、生産財企業から提供される商品(ソリューション)によって実現される利益向上効果に対して、対価を支払う。費用対効果の大きさが最も重要である。 次に、キーエンスでは、同じ意味的価値でも、顧客企業の困りごとやニーズに合わせて、ソリューションや問題解決案を提案するのではなく、顧客企業も気づいていない、問題意識や想定を超えた革新的なソリューションを提示する。結果的に、顧客企業は、こんな方法があったのかと驚くとともに感動する。つまり、デザイン思考ではなく、アート思考である。 キーエンスを題材にして、SEDAモデルの理論と実際を深掘りした研究を、著書にまとめて出版したので、2022年度は、極めて本プロジェクトに関して、大きな成果が出た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、SEDAモデルの理論を深掘りすると同時に、消費財と生産財の両面から、企業の経営戦略だけでなく、商品開発や営業を詳細に調査し、実証研究することにある。 本科研プロジェクトの前半(2021年度まで)に、SEDAモデル(Science, Engineering, Design, Art)の概念的なフレームワークを完成させた。同時に、消費財では、マツダ、パナソニック、生産財では、NEC、キーエンスなどの聞き取り調査を精力的に推進した。 その結果として、消費財については、実証研究を進め、2021年に「アート思考のものづくり」(日本経済新聞出版)として、出版した。2022年度は、SEDAモデルを生産財企業へ応用するための実証研究を積み重ねた。その成果として、2023年3月に「キーエンス 高付加価値経営の論理」(日本経済新聞出版)を出版した。 本プロジェクト内で、その最大の目的であるSEDAモデルの理論化と実証に関して、既に2冊の出版を実現したので、当初の目的を十分に実現していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度が最終年度であり、実証研究をさらに精緻化すると共に、全体としてのまとめと、学術的な理論上の貢献および、産業界への示唆としての貢献を明確に提案するための活動を強化する。 具体的には、本プロジェクトの中で出版した2冊の著書、「アート思考のものづくり」(日本経済新聞出版)と「キーエンス 高付加価値経営の論理」(日本経済新聞出版)を統合した形で、社会実装と理論的貢献をフィーチャーした論文を出版すると同時に、研究会や講演会も積極的に実施して、研究成果を社会に還元する計画である。 更には、SEDAモデルを将来的に発展させるための方向性について検討する。特に、理論的枠組みとして、アートとサイエンスに関して深掘りして、新しい概念的な展開を試みる。本研究のまとめの一部として、将来への大きな発展についても具体的に議論したい。
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Causes of Carryover |
2021年度に主にコロナの影響で、出張などの研究活動を行うことができず、大きな研究費用が繰り越されていた。2022年度は、研究活動がかなり再開することができたので、元来の計画に戻りつつある。2023年度への繰越は大きな額ではなく、当初の計画通りに研究を遂行すれば、ほぼ予定通りの支出になると考えている。
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