2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K01955
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
奥 康平 阪南大学, 経営情報学部, 准教授 (40549812)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 持株会社 / グループ経営 / 経営統合 / 企業の境界 / 中間組織 / 企業グループ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度(2020年4月~2021年3月)の研究実績は、①公表論文1編、②学会報告1回である。 ①については、「企業グループ本社における最適規模と本社形態及びその役割に関する研究 : 三重交通グループホールディングス株式会社を事例にして」として、『阪南論集(社会科学編)』56巻1号に査読論文として2020年10月に公表した。 本稿では、科研費における研究テーマである「グループ経営における企業グループ本社の最適規模と役割」に関して、企業グループ本社である三重交通グループホールディングス株式会社(以下、同社)が果たす役割や機能について明らかにした。本稿によると、同社及び同社グループ24社が企業グループとしての一体性を維持しつつも、それぞれの事業特性に応じた意思決定ができるように、グループ会議と呼ばれる会議が月1回開催されていることを指摘した。当該会議では同社からの企業グループ経営上の重要事項やグループ企業各社の経営課題などに関する情報共有が行われていることが明らかになった。これらを通じて、同社グループ全体としての経営の方向性を維持し、全体最適を追求している。加えて、当該会議による情報共有の仕組みから、グループ企業各社の経営課題などに迅速に対応するための部分最適を行う役割をも果たしていることが示唆された。 ②については、2020年10月「純粋持株会社本社を用いたグループ経営の理論と実態─三重交通グループホールディングス株式会社を事例として」をテーマに日本経営学会関西部会にて報告を行った。本報告では、同社のグループ経営の取り組みについて、企業の範囲はどこまでなのかをテーマに、中間組織と呼ばれる考え方を用いて、企業グループ本社とグループ企業という企業単一の境界だけではなく、企業グループという新たな企業の境界を設定することがグループ経営研究において重要であることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度(2020年4月~2021年3月)においては、東証一部上場企業を中心に、1,000社程度の企業グループ及びグループ経営に関するアンケート調査を実施する予定であったが、2021年5月段階で未実施である。その理由は、①新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、アンケート項目や調査企業選抜基準に関して、申請者が所属する研究会発表などを通じて内容を推敲することができなかったためである。現在は、申請者独自でアンケート項目の推敲並びに調査企業選抜を行うことで調査準備を行っている。②アンケートは基本的に郵送調査をメインにするもので想定していたが、郵送物の印刷、封筒詰め作業など物理的な作業を行うアルバイト人員を確保することができなかったこと。現在も、申請者の所属大学がある大阪府では新型コロナウイルス感染拡大が継続しており、アルバイト人員の確保は今後も困難を極める見込みである。そのため、時間がかかるものの、2021年度中の調査実施を行うために、申請者単独で郵送の準備を行うことで調査を実施することにする。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度実施する予定であった、企業グループ及びグループ経営に関するアンケート調査を実施することを最優先課題とする。当該調査を確実に実施するために次のような対応を施すことにする。 まず、アンケート項目の推敲による調査内容の充実度の追求や調査企業選抜基準などについては、申請者の知る専門知識を有する大学教員などにオンライン会議システムなどを通じて助言を求めることで解決していく予定である。また調査実施にかかる、アンケート票の発送作業については、当初はアルバイトを2名程度雇用し実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で確保ができない状況である。これについても申請者自らで実施することで、滞りなく実施するようにしたい。これらを通じて、2021年夏ごろの発送、冬ごろにアンケート結果のとりまとめを実施する。2022年度にはこれらの成果を論文などの形にして公表する見込みである。 なお、2021~2022年度は、実際の企業訪問による詳細なグループ経営に関するインタビュー調査を実施する予定であるが、2021年5月現在、新型コロナウイルス感染拡大による全国的な不急不要の外出自粛の影響を受け、その実施は困難である。よって、2020年度から文献を中心にした理論研究を先行的に実施しているが、さらに2021年度も継続的に文献等による理論研究を継続的に実施していくこととする。
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Causes of Carryover |
2020年度においては、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、旅費、人件費・謝金の執行ができなかった。他方で、企業調査を円滑に行うためのデータとして、東証一部上場企業及びその関連子会社が収録されたデータベースを購入した。 2021年度については、実際のアンケート調査実施にかかる経費として、アンケート発送にかかる委託料、郵送料、物品費、状況や必要性に応じてアルバイト雇用を行った場合の人件費などを使用する見込みである。
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