2021 Fiscal Year Research-status Report
他者の存在が消費者の羞恥感と消費行動の抑制に及ぼす影響
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20K01965
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| Research Institution | Chiba University of Commerce |
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Principal Investigator |
宮澤 薫 千葉商科大学, サービス創造学部, 教授 (10552119)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 大吾 千葉商科大学, サービス創造学部, 教授 (60434271)
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| Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | 消費者行動 / 他者 / 印象管理 / 羞恥感 / 店舗内コミュニケーション |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、店舗内に居合わせた他者が、消費者の意思決定に及ぼす影響に注目した研究の一環である。中でも消費者のネガティブな購買行動に及ぼす影響に注目し、その要因の特定と、他者によるネガティブな影響が最大化（最小化）するメカニズムを明らかにすることを目的としている。2021年度は、以下の点について研究を進めた。
第一に、概念モデルの構築である。昨年に続き文献レビューを行い、店舗内に居合わせた他者が消費者のネガティブな購買行動を引き起こす要因を再整理した。抽出された要因は、羞恥感が生じる状況、他者の条件、媒介概念としての羞恥感、ネガティブな結果行動、そして、羞恥感の度合いに影響する消費者の特性である。
さらに、これらの要因の因果関係について検討した。状況設定および他者の条件は、どちらも消費者の羞恥感を引き起こす印象管理のモチベーションと深く関わる要因であり、ネガティブな結果行動、及び羞恥感に先行する要因と位置付けることができる。羞恥感は、購買経験や満足などの結果に影響を及ぼす可能性が議論されており、羞恥感と結果行動には因果関係が想定できる。最後に公的自己意識や文化的自己観などの個人特性はこれまでも先行研究で重視されてきたことから、概念モデルにおいて羞恥感に影響を及ぼす重要な要因であると捉えた。一連の研究成果は当年度に『千葉商大論叢』に論文としてまとめた。
第二に、店舗内で羞恥感が生じる状況の特定である。概念モデルの構築にあたり、羞恥感が生じる状況は複雑で多様であることが確認できた。また、先行研究で取り上げられたケースはほとんどが欧米のものであり、日本の店舗内の状況を今一度確認する必要が出てきた。そこで、準備段階で実施した量的調査の自由回答に戻り、テキストマイニングを用い分析を試みた。この結果については次年度に論文としてまとめる予定である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に従い、2021年度は店舗内の他者が消費者のネガティブな購買行動を引き起こすプロセスを明らかにするための概念モデルの構築を行った。文献レビューを通じて、当該研究領域は研究ルーツが多様であること、そのため研究の関心が様々であり、全体像が見えにくくなっているという問題が確認された。そこで、より広範な文献レビューを行い、店舗内の他者が消費者のネガティブな購買行動を引き起こす要因の抽出と、その因果関係を検討することで概念モデルの構築を行った。文献レビュー及び、そこから得られた知見は研究分担者と共有し、モデルの構築に向け数度にわたりミーティングを実施した。また、サッポロビール株式会社様とミーティングの機会を持ち、有益なアドバイスをいただいた。
概念モデルの構築に取り組む過程で、店舗内で羞恥感が生じる状況の分類と特定が必要であることが確認された。そこで、準備段階で実施した量的調査の自由回答に戻り、テキストマイニングを用い分析を試みた。計画では、店舗における消費者の状況を広く把握するための質的調査を予定していた。しかし、概念モデルの精度を上げるために、まずは羞恥感が生じる状況に絞ってその分類と特定を急ぐ必要があると判断し、一部計画を変更し研究を進めた。
一部変更はあったものの、概念モデルの構築についてはほぼ計画通り進展した。一方で、羞恥感の尺度開発については、量的調査の実施には至らなかった。先行研究では、単一次元の尺度を用いる研究が多く、多次元を提案する一部の研究についても尺度の妥当性まで確認しているものはほとんど見られなかった。領域を広げ文献レビューを重ねることで、多次元の可能性についてより慎重に検討した上で、量的調査を実施すべきだと考えた。
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| Strategy for Future Research Activity |
2021年までに得られた知見をもとに、今後は以下の3点について研究を進めていく。第一に、概念モデルの精緻化である。テキストマイニングを用い分析した自由回答データに、インタビュー調査や企業のマーケティング担当者からのアドバイスを加え、より実態に近い概念モデルの構築を目指す。
第二に、上記モデルの検証である。調査の実施に当たり、企業のマーケティング担当者とのミーティングを実施し、実務的な視点からアドバイスを得ることで実際の店舗環境を反映した質問項目を作成する。また、文化的自己観の違いが日米の羞恥感にどう影響するのか、日米の羞恥感の違いが他者の視線のある中で消費者のネガティブな行動にどのように影響するのかを明らかにするため、日米で調査を実施し、比較する予定である。ただし、昨今の社会情勢から、海外で調査を実施した際、サンプル数の確保や適切な回答が得られるかといった点などを慎重に考慮し調査の実施を決定する必要があると考える。米国での調査が難しいと判断した場合、国内での調査をプレ調査（質的調査）、本調査（量的調査）の2段階に分け、国内の店舗内における他者の影響をより正確に捉えることに集中し、その後の米国との比較に備える。
第三に、羞恥感の尺度に関する検討の継続である。多次元を提案する一部の研究で用いられる尺度は、概念モデルにおける結果行動と重なる項目も多く、概念間の弁別が不明瞭である。2021年までの文献レビューをもとに、さらに領域を拡げ羞恥概念に関する文献レビューを行った上で、量的調査に繋げていく。
なお、これらの研究を効果的に進めるため、研究代表者、分担者の所属する学部と教育連携をする企業群との研究会への報告、研究協力者への報告を通じ、研究方向性を修正しながら進めていく。また、研究成果については、日本消費者行動研究学会、日本広告学会、『千葉商大論叢』等で発表していく。
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| Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は以下の2点である。第一に、計画していた店舗における消費者の状況を広く把握するための質的調査を延期したためである。概念モデルの構築に取り組む過程で、店舗内で羞恥感が生じる状況の分類と特定を急ぐ必要があると判断した。そこで、質的調査に先立ち、準備段階で実施した量的調査の自由回答に戻り、テキストマイニングを用い分析することを優先させた。テキストマイニングで得られた方向性をもとに、次年度、概念モデルの精緻化に向けた質的調査を実施する予定である。
第二に、羞恥感の尺度開発に向けた量的調査の前提となる議論を、慎重に行うべきであるという結論に至ったためである。先行研究では、単一次元の尺度を用いる研究が多く、多次元を提案する一部の研究についても尺度の妥当性まで確認しているものはほとんど見られなかった。領域を広げ文献レビューを重ねることによって、尺度が多次元である可能性を慎重に検討し、その議論を踏まえて量的調査を実施すべきだと考えた。そのため、当該調査の予定を次年度に変更し、そのための費用を次年度に繰り越すこととした。
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