2021 Fiscal Year Research-status Report
小規模零細小売・サービス事業者の事業承継課題と伝達ノウハウに関する研究
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20K01967
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
石川 和男 専修大学, 商学部, 教授 (60300034)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 事業承継 / 小規模小売・サービス / 伝達ノウハウ / 新型コロナウイルス感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、本研究の中間年である2年目に当たり、本来であれば、研究対象とする小規模零細小売業・サービス業に対して、アンケート調査をする予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症のため、研究対象が大幅に営業規制の対象となり、それに対応する補償対象となったため、通常事業においての事業承継研究とはならないことが予測された。そこで定量分析ではなく、聞き取り調査による定性分析や旧商家に存在する古い資料などを閲覧させてもらい、かなり以前の過去に遡っての事業承継に関する調査実施した。当初は、海外調査などを実施し、わが国との比較分析をする予定であったが、やはり新型コロナウイルス感染症のため、渡航することができず、国内事例のみの分析となった。 かなりの制限がある中での研究実施となり、新型コロナウイルス感染症の感染状況により、聞き取り調査などの予定にも気をつかったり、変更を余儀なくされたこともあったが、感染状況を前提として、研究を進めたため、研究の方向性や解明したい課題は不明確になることはなかった。そのため、研究計画時には、予測していなかった研究アプローチを行ったが、成果としては複数回の学会報告、複数箇所でのワークショップの実施、論文も複数本まとめることができた。 特に伝統産業品である陶磁器産地における小規模卸売商人の行動を中心として、本研究課題である伝達ノウハウに関しては、考察が深められた。またそれについてまとめた論文が、査読付論文として掲載されるなど、一応の成果があがった。さらに新型コロナウイルス感染症という研究課題申請時には、全く予測もしなかった状況により、研究対象である小規模零細小売・サービス事業者が大きな影響を受け、それにより事業承継が一時中断する状況となり、改めて事業を再考する機会を得た事業者からは有益な示唆が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況は、概ね順調に進展していると判断している。研究課題申請時に予定していた定量調査は、新型コロナウイルス感染症により、営業規制等の対象となる小売業やサービス業が多くあったため、感染拡大以前の状況の延長線上では考察することは不可能となった。そのため、定量調査を聞き取り調査を中心とした定性調査に切り替え、また感染拡大時には、古い資料などに目を通し、事業承継の伝達ノウハウについて、考察を深めることができた。 当初予定していた海外の小売やサービス業における事業承継の状況との比較研究は、現地に赴き、聞き取り調査など実施する予定であったが、当然のことながら断念せざるを得なくなった。しかし、これまでほとんど考慮していなかった伝統産業における商品移出などに関わる卸売業者を対象として研究を進めていった結果、さまざまな地域での事業承継に関する伝達ノウハウに触れることができた。 また感染状況が落ち着いていた令和3年の秋には、大分県や愛媛県において、小規模事業者を中心としてワークショップを開催し、課題を投げかけたところ、さまざまな生の事業承継に関する課題や問題に触れることができた。 さらに定性調査の結果や、ワークショップで得られた貴重な情報、古い商家での資料からの知見を整理し、学会報告、論文投稿をし、学会ではさまざまな反響、査読論文は採用されるなど、成果として認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年である令和4年度は、本研究課題をまとめることに集中するとともに、これまでの2年間において実施できなかった定量調査について、当初の予定よりは小規模なものとなるが、実施したいと考えている。特にこの2年間、新型コロナウイルス感染症が世界を覆ったことにより、消費者を取引相手とする小規模零細小売業やサービス業もさまざまな影響を受けた。当然、事業承継も新型コロナウイルス感染症以前に、経営者が描いていた状況とは、大きく変化したようである。そこで感染拡大以前と現在における事業承継にあたっての経営者の態度等を中心として考察したい。 また本来の研究課題は、小規模零細小売・サービス事業者の事業承継課題を明確にし、事業承継にあたってこれまで大切にしてきた伝達ノウハウを明確にすることであるため、感染状況をにらみながらではあるが、定性調査を重ねることを中心に進めたい。 さらに3年間の成果として、関連学会である事業承継学会やファミリービジネス学会において、成果の一部を公表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた統計処理費が定量調査を実施しなかったために発生せず、また新型コロナウイルス感染症拡大のため、当初予定していた出張が実施できなかったために次年度使用額が生じた。
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[Book] 商学入門2021
Author(s)
石川 和男
Total Pages
248
Publisher
中央経済社
ISBN
978-4-502-39481-2
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