2020 Fiscal Year Research-status Report
NBメーカーのデュアル・ブランド戦略に関する日米英3カ国の国際比較研究
Project/Area Number |
20K01976
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
浦上 拓也 神奈川大学, 経済学部, 教授 (40387585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢作 敏行 法政大学, イノベーション・マネジメント研究センター, 研究員 (40230289)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | デュアル・ブランド戦略 / プライベート・ブランド開発・製造 / 価値創造型プライベート・ブランド / ブランド・ポートフォリオ戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の目的は、わが国におけるNBメーカーのデュアル・ブランド(DB)戦略の条件と効果を整理していくことであった。これまで標準型プライベート・ブランド(PB)のDB戦略を取り上げてきたので、次の課題として価値創造型PB(品質段階で言えば、高品質PB)を取り上げて、その既存研究を整理し、事例研究を行うことであった。主な仮説は、価値創造型PBは高品質・高価格であるために大手NBメーカーにとっても開発・製造しやすいと考えられているが、受託するかどうかは、メーカーのブランド・ポートフォリオ戦略に影響を受けるだろうというものである。なお、本事例研究の論文はまだ刊行されてはいない。 事例は、大手小売業で2000年以来発売されており、大手NBメーカーが受託している価値創造型PBを対象とした。文献調査に加えて、消費者パネルデータによって当該小売業のカテゴリーにおけるNBとPBの販売動向を把握した。 まずは当該小売業における高品質PBの全体的な販売状況をみると、継続的に発売されているものは決して多くはなかった。高品質PBといっても、NBとの差別化は容易ではないことがわかった。 当該小売企業が当該メーカーを選択した理由は、メーカーが高品質NBを強化し技術力が高かったためであった。一方、メーカーが受託した理由は、PBが高品質であることに加えて情緒的価値によって市場を開拓しようとしたためと考えられる。つまり、小売業とメーカーはともに高品質市場を狙っていたが、ブランド戦略が異なっていたために、PB開発・製造が行われたのである。その結果、PBは継続的にリニューアルも行われ、当該メーカーにおいて大きな販売割合を占めるようになったが、高品質市場に対するアプローチに課題が残されたように思われる。以上のように、メーカーのPB開発・製造受託とブランド・ポートフォリオ戦略は相互に影響したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は2段階の調査であり、現在は第1段階として、わが国におけるDB戦略の条件と効果を整理する段階である。なお、第2段階は、DB戦略の国際比較研究を行う予定である。 第1段階ではいくつかの調査を予定しているが、現在は上述した通り、その最初として、価値創造型PBにおけるDB戦略を整理しているところである。 価値創造型PBのDB戦略を整理し、これまでに分析を行ってきた標準型PBにおけるDB戦略とあわせて考察を行っていく予定であるが、遅れている状況である。その理由としては、後述するように、関連する領域のレビューを行っていることなどによる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、大手NBメーカーがPB開発・製造を行う要因として、当該メーカーのブランド・ポートフォリオ戦略に焦点を当てている。大手NBメーカーが受託する理由として、小売業とのパワー関係やメーカーのPB受託を直接的に促す要因(工場稼働率の向上や小売業との関係強化など)だけではなく、そのブランド・ポートフォリオ戦略が大きな影響を与えると考えているためである。 しかし、大手NBメーカーが柔軟にPB開発・製造を行うことは、例外的あるいは先端的な事例であり、またブランド・ポートフォリオ戦略に焦点を当てた研究は少ない。したがって、理論的な考察を行っていくために、PB関連の研究だけでなく、関連領域の研究のレビューがさらに必要であると考えている。 メーカーのブランド・ポートフォリオ戦略に関連する研究として、製品ラインの拡張や製品増殖(proliferation)などがある。例えば、製品ラインの拡張が価格やブランド評価に与える効果に関する研究は、メーカーのPB受託の意向に参考になると思われる。関連する領域のレビューをあらためて行い、その上で事例研究を進め理論的な考察を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
POS(販売時点情報管理)データまた消費者パネル調査データを取得する予定であったが、事例研究が遅れているために、その取得も遅れている。ただ、必要であると考えているために、次年度以降に使用する予定である。
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