2020 Fiscal Year Research-status Report
海外市場におけるMade in Japanの誘因分析:米国消費者を中心として
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20K01991
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
圓丸 哲麻 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 准教授 (00636996)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フォーカスグループインタビュー / 企業インタビュー / 自民族中心主義 / コミュニティ意識 / エンゲージメント |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、コロナ・ウィルスによるパンデミックの関係で、当初の予定していた米国消費者への現地でのデプス・インタビューおよび参与観察の実施ができなかったものの、現地日本法人企業担当者へのオンラインインタビューを実施することができた。 また、日本独自の小売ブランドや日本食に関するフォーカスグループインタビュー(以下FGI)を、国内在住米国籍消費を対象に実施し、購買意思決定における「日本産」という原産国情報(COO)への評価要因の実態を検討した。 調査の結果、調査対象者は日本のブランド・製品に対して、「清潔(Clean)」、「整頓されている(Organized)」、「細かなところまで目が届いている(Attention to Details)」、「品揃えの多さ(Many Choices)」、「カラフル・スタイリッシュ・シンプルなデザイン(Colorful、Stylish、Simple Design)」を評価していることが明らかになった。 しかしその一方、米国人消費者が日本の小売業やレストラン利用時に感じる、心理的にネガティブ距離感として、(特に飲食店における)パーソナルな顧客への積極的な声掛け等のフレンドリーなコミュニケーションの欠如、自分の好みに応じてカスタマイズできる機会が少ない等が知覚されていることが明らかになった。 インタビュー調査およびFGIから、心理的に身近に感じるブランドは、「日本らしさ」や「米国らしさ」という民族的特徴よりも、個人の選択の自由を手助けする豊富な品揃えやライフスタイルに合った商品やサービスを提供するブランドが好まれていることが確認された。すなわち、日本ブランドが米国人の個人主義に寄り添っているかどうかが、心理的距離感を左右していると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フォーカスグループインタビューの結果、米国人消費者の日本産ブランドへの知覚・評価だけでなく、米国ブランドの評価との知覚・評価の違いも確認することができた。その結果、当初予定していた現地でのデプス・インタビューおよび参与観察の調査で検討予定であった、「米国人消費者が心理的に距離が近いと知覚する小売店とは何か?」に対する問いの答えを確認することができた。具体的には、多くの米国人消費者は「COSTCO」をアメリカらしい小売店だると捉え、その当該ストアを自身が他のストアを評価する際の基点にしていることも確認することができた。 加えて消費者が重視する価値観として、民族的な価値観よりも、自身のアイデンティティと関連した価値観(ライフスタイルなど)が位置付けられていることも確認することができた。さらに「COSTCO」も含む日米の小売店に関して、調査対象者が想起するストアとそれとの心理的距離に基づく評価の違いも確認することができたことも、研究を遂行する上で有益な結果であった。 以上の調査結果から、2021年度予定していた仮説モデルの修正も可能となった。さらに、質的研究の方法論に関する文献調査から、2021年度において実施する、コロナ禍の環境も踏まえた調査方法の検討も2020年度中に策定することができた。 これらの理由から、「当初の計画以上に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究としては、仮説モデルの検証のためのプレ調査を実施するとともに、米国人消費者のtwitterのデータを用いたテキストマイニング分析を実施し、日本産の製品・ブランドへの評価について、コロナ前(2019)、コロナ禍(2020~)の評価の違いを検討する。 コロナ禍以降、米国においてアジア人へのヘイト態度や行動が散見されるという環境も考慮し、それらの意識との日本産製品・ブランドへの評価との関連性を検討する。 また、今年度以降も日本在住米国人消費者が評価する日本のリテール・ブランドやレストランへのインタビュー(オンライン)を実施し、海外市場での競争優位と、コロナ禍における課題等をヒアリングする。 それらの結果を踏まえ、再度仮説モデルを修正し、2022年度の定量調査に向けて、調査紙の設問項目を検討する。 続く2022年度は、米国人消費者へのインターネットアンケート調査を実施し、仮説モデル(修正版)の妥当性と共に、さらなる修正箇所の検討を行う。
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Causes of Carryover |
少額の残であったため、次年度に持ち越し使用することとした。次年度は、物品購入あるいは調査費(費目その他)で使用する予定である。
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