2020 Fiscal Year Research-status Report
An Empirical Study on the Influence of Health Literacy and Concepts of Health Behavior Theory on Consumer Behavior
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20K01992
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
櫻井 秀彦 北海道科学大学, 薬学部, 教授 (70326560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森藤 ちひろ 流通科学大学, 人間社会学部, 教授 (10529580)
岸本 桂子 昭和大学, 薬学部, 教授 (50458866)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヘルスリテラシー / 健康行動理論 / 意図的/非意図的 / QOL / 継続消費 / アドヒアランス |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、QOLの回復/増進、消費の選択/継続の4つのカテゴリのうち、「QOL回復・継続消費」に該当する慢性疾患治療薬に関する調査を実施した。調査は無事終了し、各疾患で300名超、計1200名超のデータ収集を行うことができた。 分析においては、先行研究に基づいて測定した影響要因である自己効力感、患者エンパワメント(情報探索や知識獲得意欲)、ならびにヘルスリテラシーからの意図的/非意図的な服薬中断、更には服薬継続(アドヒアランス)尺度への直接的および間接的な影響構造をパス解析にて検討した。 アドヒアランス尺度には、非意図的中断が最大影響要因であり、慢性疾患では直接効果としては意図的中断がそれに続くが、総合効果では効力予期の影響が上回っていた。一方、急性期の抗菌薬は、意図的中断の影響が相対的に小さく、非意図的中断のそれが極めて大きかった。ここでも情報探索、知識獲得、更には、批判的ヘルスリテラシーはアドヒアランス尺度に対し負の影響を示した。よって影響度順では失念等による非意図的中断への対処が最優先され、次いで効力予期を高めること、更に慢性疾患では意図的な中断への対応も必要なことが示された。また各影響要因からのアドヒアランス尺度への直接のパス係数では、効力予期からのパスのみが有意であり、このことは多くの健康行動理論や実証研究が支持するように、効力予期が継続行動に対して直接的かつ間接的に働きかける強力な規定因であることを示唆していると考えられた。一方、影響度は相対的には大きくないものの、情報探索、知識獲得、批判的ヘルスシテラシーなど、消費者の情報や知識に対する過度なコミットは意図的、すなわち自己判断による中断行動の要因となる可能性が示唆された。よって、医療職ならびに医療サービス提供組織においては、これらに対する対処も必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はQOLの回復/増進、消費の選択/継続のカテゴリのうち、「QOL回復・継続消費」に該当する慢性疾患治療薬に関する調査を実施できた。糖尿病、高血圧の慢性疾患と、比較対象として、近年、途中で服用を中止すると耐性菌などの問題が指摘されている、急性期疾患(感染症等)で用いられる抗菌薬を対象財とした。これらの患者に対し、計1200名分のサンプル数を確保することができた。また、この調査データを分析し、2つの異なる分析モデルで解析した。1つは、ヘルスリテラシー尺度の他、ヘルスビリーフモデルに基づく、薬に対する否定的な意識(“脅威”)など複数の健康理論を継続消費の影響要因に設定し、目的変数を意図的な消費中断と非意図的な消費中断の2変数としたもの、もう1つは3次元の機能的・相互的・批判的へルスリテラシーの服薬行動への影響を、自己効力感を媒介変数とした階層構造として分析するモデルである。これらに関する学会発表を2演題行うことができた。このうち、1演題分のプロシーディングス論文を基に、フルペーパーでの学会発表も採択済みであるなど、査読誌への投稿に向けた論文化も進んでいる。残り1演題分も、論文化の目途を付けている。 本助成研究は、QOLの回復/増進、消費の選択/継続で区分する4カテゴリのうち、「QOL回復・消費選択」「QOL回復・継続消費」「QOL増進・継続消費」の3カテゴリを対象とするが(「QOL増進・消費選択」は一般的な財・サービスであり膨大な研究の蓄積があることから対象外)、初年度は「QOL回復・継続消費」に該当する慢性疾患治療薬に関する調査を実施した。2年目の「QOL回復・消費選択」の調査も既に進んでおり、初年度の分析、更には論文化も進んでいることから概ね順調に進展していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査完了と分析結果に基づき、申請時の研究計画では、2年目は同じ継続消費が必要でも、QOL増進型の消費であるフィットネスジムや健康食品に関する調査を行う予定であった。しかし、コロナ禍の影響により、QOLの増進に向けた消費意識・行動は大きな影響を受けていることから、3年目に計画していた、「QOL回復・消費選択」に関する調査の方を前倒しすることとした。このため、今年度は、「QOL回復・消費選択」に該当するOTC(一般用医薬品)に関する調査を行う予定である。花粉症やドライアイに関する治療薬に焦点を当て、商品選択の他、受診(医療用医薬品の購入)やOTCと処方箋薬の併用、更には過剰使用についても、その要因も含めて調査する計画を立てている。 また、初年度の調査結果を論文化し、学会発表にかけるとともに(演題採択済み)、年度内に査読誌に投稿する予定である。比較的大がかりな調査を実施できたことかから、可能であれば2つの論文として、それぞれに適した学会誌に投稿したいと考えている。 以上のように、QOLの回復/増進、消費の選択/継続のカテゴリのうち、「QOL増進・消費継続」に該当するフィットネスジムに関する調査については、コロナ禍の感染リスクへの意識などにより、通常の意識下での回答が得られないと判断し、最終年度へ順延することとし、更に状況によっては当初のサプリメントの他、同じサブスクリプション消費にあたる、有料アプリ等を用いるもので、かつ継続消費が必要となるような別な対象財(通信教育やオンラインフィットネス等)に変更するなど、対応策を別途検討中である。
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Causes of Carryover |
当初の希望サンプル数で調査見積(3社)を取ったところ、費用が予定額を大幅に超過した。このため、対象疾患数とそれぞれの群のサンプル数を、多変量解析に堪えうるレベルの中で可能な限り減らしたところ、若干の残額が生じたもの。 また、コロナ禍の影響により、研究打合せ、もしくは学会発表はすべて遠隔となり、当初予定していた出張旅費の支出も無くなったことも理由である。 残額については、今後の調査費用もしくは学会発表や論文投稿のための経費とする予定である。
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