2021 Fiscal Year Research-status Report
モバイルコミュニケーションが消費者購買意思決定に与える影響に関する実証研究
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20K01994
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
坂下 玄哲 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 教授 (00384157)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 消費者購買意思決定 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近年における情報技術の発展と消費者行動の変化に注目し、小売企業がモバイル端末上で消費者に直接的に行うコミュニケーション活動が、彼らの購買意思決定にいかなる影響を与えるかについて、特に消費者の認知構造および行動特性といった視点から理論的、かつ実証的に検討を加えることであった。小売企業のモバイルコミュニケーションによる消費者行動の変化という現象について、特に消費者の視点から接近することにより、理論的には、コミュニケーション、消費者行動、および小売マネジメント研究の架橋を試み、そこでの主たるキー概念、および概念間関係の精緻化を試みる。実務的には、特に小売企業を中心とするマーケティング意思決定者のコミュニケーション戦略策定に具体的な行動指針を提供することが目指されている。以上の研究目的を達成するために、研究期間である三カ年を通じて、①研究枠組構築と仮説導出、および②抽出された仮説の検証による研究枠組妥当性の確認という、大きく二つのステップに分けた研究計画が立てられた。それぞれのステップにおいては、異なる複数の研究手法を用いたアプローチが立案された。 二年目となる本年度は、初年度同様、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から小売店舗における観察調査やインタビュー調査は自粛することとなったものの、主に①に関わる二つの研究活動を行った。第一に、デジタル機器上のコミュニケーションにまつわる消費者行動に関する研究蓄積を網羅的に整理し、研究枠組の構築および拡大につとめた。同時に、研究枠組洗練のために一般消費者を対象とするオンライン質問票調査を複数回実施し、経験データを収集、分析した。こうした研究活動の結果、新たなデジタル機器上のコミュニケーションが消費者の購買意思決定にどのような影響を与えるかについての知見を得た。発見事項についてまとめ、学術雑誌に投稿し発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先で掲げた二つのステップを達成するため、三カ年で以下の四つの研究段階を進めることが計画された。第一段階は関連研究分野における既存研究を包括的、網羅的にレビューし整理するもの、第二段階は、研究の焦点となる概念やその他の重要な諸要因について、経験データの収集および考察を通じて確認するものである。第三段階は、文献レビューから収集された知見、および実際に収集された経験データから得られた知見を総合的に検討し、キーとなる諸概念間の関係について記述した仮説を抽出するものである。ここまでの研究活動でステップ①の実現を目指す。最後の第四段階ではステップ②の実現を目指し、第三段階において抽出、洗練された仮説の検証にむけた具体的調査の設計、およびデータの収集、分析、結果の解釈を通じて、構築された研究枠組の経験的妥当性の検証を試みるものであった。 二年目となる本年度は、ステップ①達成に向けたさらなる準備活動として、初年度に引き続き第一段階、第二段階、加えて第三段階の到達を目指して研究活動が行われた。しかしながら先述のように、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、特に小売実店舗における調査活動が困難となったため、新しいデジタル機器における小売店頭外でのコミュニケーションも研究対象として研究が進められた。文献レビュー(第一段階)、オンライン質問票調査による経験データ収集および分析(第二段階)を行った上で、最終的に検証すべき仮説抽出が目指されたものの(第三段階)、小売店頭における消費者行動に関する知見が限定的であったため、第三段階の達成に多少の遅れをとることとなった。しかしながら、デジタル機器上のコミュニケーションによる小売店舗外消費者行動への影響については発見事項をまとめることができたことを加味し、全体の進捗を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目の研究活動から、モバイル機器を含む広くデジタル機器上のコミュニケーションを研究対象に拡大したことから、カバーすべきキー概念も増加することとなった。これを受け、来年度も引き続き、先で述べたステップ①実現に向けて文献レビューや経験データの収集および分析を通じた研究枠組の洗練、検証すべき仮説の抽出につとめ、最終的にはステップ②の達成を目指している。文献レビューについては、研究の焦点となる「購買意思決定」「デジタル機器上のコミュニケーション情報処理」について、特に店頭内外の影響をとらえるためのキー概念の抽出、および研究枠組への組み入れを検討する予定である。経験データの収集および分析に際しては、引き続きオンライン質問票調査の実施を計画しているものの、新型コロナウイルス感染症拡大の状況によっては、当初予定していた実際の小売店頭における消費者行動に関する情報収集も視野に入れている。こうした研究活動を通じて最終的に検証すべき仮説を抽出することにより、ステップ①の達成を目指している。その上で、ステップ②の達成のために、抽出された仮説を検証するための具体的調査を設計・実行し、収集されたデータの分析と結果の解釈を通じて研究枠組の経験的妥当性について確認したいと考えている。これらの研究活動に際しては、初年度、二年目においては実行できなかった国内外の学会や研究会における研究知見の発表や、専門家との意見交換も可能な限り行ってゆくことで、効率的に研究を推進してゆきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
国内外における新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、当初予定していた出張および調査などを含む研究活動をやむなく取りやめることとなったため、次年度使用額が生じている。次年度は新型コロナウイルス感染症の拡大状況を引き続き慎重に確認しつつ、十分な感染予防対策を講じた上で、可能な限り出張や調査を行うことで、計画的な支出を行いたいと考えている。
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