2020 Fiscal Year Research-status Report
質的比較分析を用いた顧客満足度ならびにロイヤルティ形成過程研究
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20K01998
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
豊田 裕貴 法政大学, イノベーション・マネジメント研究科, 教授 (40398946)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ブランド評価分析 / 評価構造分析 / 少数事例によるルール抽出 / 質的比較分析(QCA) / ブランドマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、顧客の満足度ならびにロイヤルティ形成過程について、個々人の多様性や評価ルールの複雑性(複雑な交互作用や影響の非対称性)を加味し、具体的な形成パターンを抽出する方法を構築することにある。このことにより、顧客の意思決定の仕方をより詳細に検討する方法を得ること、そしてそれに対応したマーケティングを考えるための情報を得ることを目指すものである。 2020年度の研究では、上記目的に対して、QCA(質的比較分析)を活用した評価パターン分析アルゴリズムを構築し、調査データに適用した結果、次のような成果を得た。 第一に、QCAの特徴である少数のデータからであっても、「○○という点に満足を感じていない場合でも、△△という点の満足度を得られれば、全体として評価が高い」といった補償型のルールを抽出できることを確認した。とくに同じデータを従来の線形モデルで分析したときには得られなかった評価形成パターンを得られることが確認できたことは重要な成果としてあげられる。 第二に、「顧客からの評価を得るための条件を「必要条件」と「十分条件」から整理し、そのパターンから顧客を類型化することが可能であること」を確認した。これらは、研究全体の目的の一つである企業側のSTP(セグメンテーションに基づく適切なポジショニングを取るマーケティング構築)を行う上で必要な情報を、従来よりも少数のデータでより柔軟なモデルとして提供できるという意義を持っている。 ただし、これらの方法をより実践的かつ多くの場面で活用できる方法に一般化するには、適切な変数(顧客の評価軸)の設定が不可欠である。そのため、2021年度にはこれら変数セットの選択方法の研究ならびに多カテゴリーでの追加検証を行う必要がある。そのための基礎研究として2020年度の成果は、基本手法の構築という点で重要な成果と位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、顧客満足度ならびにロイヤルティ形成過程について、個々人の多様性や評価ルールの雑性(複雑な交互作用や影響の非対称性)を加味し、具体的な形成パターンを抽出する方法を構築することにある。具体的には、QCA(質的比較分析)アルゴリズムを用いた評価パターン方法を構築し、実際の事例に適用することを目指している。 2020年度はこれら目的に対して、アルゴリズムの作成ならびにそれに適したデータの特定および調査票(アンケート票)の作成と実査を目指していたが、コロナ禍の影響により、調査を実施することができず、「アルゴリズムの作成ならびにそれに適したデータの特定」の研究までにとどまった。 ただし、先行研究のレビューならびに過去のデータへのアルゴリズムの適用などから、分析に必要なデータの特定と分析方法の基本となる手順については、十分に目標に達していると考えている。 加えて、調査票案についても、プリテストレベルでは、概ね成果を得るに至っており、本調査の実施が2021年度以降にずれ込んだことはあるものの、概ね順調に進展していると評価している。 なお、調査については、提案手法の多面的な評価が不可欠なことから、異なるカテゴリーでの調査を複数行う必要があり、計画からずれた分、実施時期の工夫を検討することが、目下の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度以降は、2020年度に得られたアルゴリズム案の適用とそこから得られる知見による修正が主たる目的となる。 そのためには、複数のカテゴリーを対象に、実際に提案手法を適応し、消費者のブランド評価構造についての知見を得ると同時に、アルゴリズムとデータについての改善すべき点の検討を行うことが必要となる。 そのための準備として、第一には、「対象とすべきカテゴリーの選定ならびに調査項目の選定」が必要であり、この点を決定するための質的調査(ヒアリング調査を含む)の実施を計画している。第二に、2020年度に作成した調査票の素案を元に、より適した調査票へと修正するための調査も並行して準備中である。具体的には、本調査に先んじ、WEB調査での調査方法の修正案を複数実施し、調査票の質の向上を試みることを計画している。第三には、得られたデータによる提案手法の評価である。この評価に際しては、従来の手法(線形モデルや機械学習モデル)との分析結果の比較が必要となり、その評価について、それぞれの専門家からの評価が必要であることは言うまでもない。そのため、2022年度の研究期間の満了以前に、随時、学会・研究会での発表および議論、そして論文投稿を予定している。 なお、研究そのものというよりは、研究の発信の仕方に関わる点ではあるが、提案手法の理解を得るために、最も重要なパーツを担うQCA(質的比較分析)のアルゴリズムについて、それを必ずしも専門としない研究者・実務家にとってもわかりやすい説明資料作成と手法の普及のためのセミナー実施も計画している。 以上の各点から研究を推進し、よりよい研究成果の完成を目指す。
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Causes of Carryover |
2020年度実施を予定していた調査(質問紙調査および実地調査での旅費などを含む)が、コロナ禍の影響で実施することができず、2021年にずれ込んでしまった分、2020年度予算執行が予定より少額となり、次年度以降に繰り越されることとなった。 この調査分については、2021年度での実施を予定しており、調査費用として差額の執行を予定している。
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