2022 Fiscal Year Annual Research Report
Economic Effects of Directors on M&A Transaction and Accounting Procedures
Project/Area Number |
20K02006
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
加賀谷 哲之 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80323913)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 取締役 / M&A / のれん / 人的資本 / 資本配分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の狙いは、取締役会を構成する取締役それぞれの経験や知識・スキルなどから構成される人的資本が、企業によるM&A取引やその会計処理に与える影響を検討することにある。本研究では、こうした人的資本の中でも特に各取締役の経験値にフォーカスをあて、自社および他社におけるM&Aの経験が、その後のM&Aに対する評価や会計処理にどのような影響を与えるかを検討した。 取締役の経験値をいかに定量化するかについては、Tuschke et al(2014,SMJ)を参照している。同研究では、ある企業の取締役が別の企業の取締役に就任するというBoard Interlockにフォーカスをあて、取締役が他社のトップマネジメントとして経験するか、あるいは他社の取締役として経験するかに応じて、あるいは当社への関与がトップマネジメントとしてか、取締役としてかに応じて、新興国への市場参入への意思決定が異なってくるかを検討している。本研究では当該研究を援用し、当社でM&A取引を経験した取締役がいる場合をDirect Ties、他社でM&A取引を経験した取締役が当社にいる場合をIndirect Tiesとしたうえで、当該経験がM&A取引に対する市場評価やのれんの償却期間の選択に与える影響を検討した。 検証の結果、それぞれの経験が株式市場の評価に与えるかどうかという観点では一定の結論を導き出すことができなかった。一方で、のれんの償却期間の選択という観点でいえば、過去にM&A取引の経験のあるトップマネジメントあるいは取締役のいる企業では、のれんの償却期間がより長期で選択される傾向があることが確認された。M&A取引は成果の不確実性が高く、それがゆえにその償却期間の選択などにおいては、事前の経験値が影響を与える可能性があることを本研究の検証結果は示唆している。
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