2021 Fiscal Year Research-status Report
会計基準の変更が資本市場と企業行動に及ぼす影響に関する実証研究
Project/Area Number |
20K02008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
草野 真樹 京都大学, 経済学研究科, 教授 (50351440)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 会計学 / 会計基準の変更 / 認識対開示 / ストック重視の会計 / 退職給付 / 為替換算調整勘定 / 資本市場 / 企業行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,会計基準の変更が資本市場と企業行動に及ぼす影響について実証分析を行い,貸借対照表を重視する会計モデルの特性を明らかにすることである。まず,退職給付の会計基準の変更が企業行動に及ぼす影響について実証分析を行った。本研究は,退職給付の認識と開示の差異が経営者の裁量に及ぼす影響について検証した。連結財務諸表において未認識項目を貸借対照表で認識する企業(認識企業)は,個別財務諸表において当該項目を注記で開示する企業(開示企業)と比べ,企業会計基準第26号適用以降,割引率を高く設定する。とくに,年金資産の積立不足が大きい場合や債務契約のインセンティブが大きい場合,認識企業は,開示企業よりも企業会計基準第26号適用以降に割引率を高く選択する。これらの結果は,経営者が年金負債を過小に報告するために,割引率を用いて数理計算上の仮定を裁量的に操作していることを示唆している。 また,本研究は,企業会計基準第25号による包括利益の導入が資本市場に及ぼす影響について実証分析を行った。とくに,為替換算調整勘定に焦点を当て,その期中変化の価値関連性について検証した。製造業において,為替換算調整勘定の期中変化は,企業の海外展開の程度が一番低い企業群で株価と関連性があるという結果を得ることができなかったが,海外展開の程度が進展するにつれて,株価との正の関連性を強め,企業の海外展開の程度が一番高い企業群で株価と正の関連性を有していた。さらに,製造業において,為替差損益の価値関連性は,企業の海外展開の程度が一番低い企業群で為替換算調整勘定の期中変化の価値関連性と差異はあるが,それが一番高い企業群で為替換算調整勘定の期中変化の価値関連性と差異を見出すことができなかった。これらの実証結果は,海外展開の程度や業種という企業の特性が為替換算調整勘定の期中変化の有用性に影響を及ぼすことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ,会計基準の変更が資本市場と企業行動に及ぼす影響についてデータ整理と実証分析を進め,研究成果を公表していることから,「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,当初の研究計画に従って,会計基準の変更が資本市場と企業行動に及ぼす影響に関する実証研究を進め,貸借対照表を重視する会計モデルの特性を明らかにする。
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