2021 Fiscal Year Research-status Report
Empirical Research about Financial Statement Complexity and Voluntary Disclosure
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20K02012
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
浅野 敬志 東京都立大学, 経営学研究科, 教授 (30329833)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 会計学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、会計情報の複雑性とその影響を分析し、負の影響がある場合はその軽減策(自発的開示)を明らかにすることにある。本年度は国内外の先行研究の整理を通じて、会計情報の複雑性の要因とその経済的帰結を分析した。その成果は、国際会計研究学会スタディグループの中間報告書に掲載されている。 本年度明らかになったのは次の4点である。①会計情報の複雑性の要因は、商取引の複雑化・高度化、会計・開示制度の複雑化、経営者の意図の3つに整理できる。②先行研究では、セグメント数などの企業特性、決算資料の単語数、決算資料の可読性、会計方針の単語数、注記における収益認識の単語数と収益認識方法の数、Compustatの項目数、XBRL決算資料の項目数といった7つの指標が、可読性の尺度には、Flesch-Kincaid readability、LIX readability、RIX readability、Gunning Fog readability、ARI readability、SMOG readabilityといった6つの指標が利用されている。いずれの指標も、値が高いほどテキストの可読性が低い(読みにくい)。③複雑な会計・開示制度は取引または企業の経済的実体を理解する投資家の能力を損ない、投資家の情報環境を悪化させるとして、基準設定者にネガティブに捉えられている。④基準設定者は会計情報の複雑性に対処するため、会計基準の簡素化に向けて取り組んでいる。企業においても、複雑な会計基準を適用する際に自発的開示(業績予想の開示)を増やしたり、会計情報が複雑な企業は取締役会や監査委員会に会計専門家を積極的に採用したりすることが観察されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、本研究に関連する2本の単著論文を公表したものの(会計情報の複雑性の要因と経済的帰結、サステナブル資本市場における会計の役割)、データ整理に時間を要していることから、本研究はやや遅れていると言える。今後は、サステナビリティ報告(ESG情報開示)が財務報告より複雑にならざるを得ない点、およびサステナビリティ報告に関する多くの基準やフレームワークが策定され、報告の作成者と利用者の双方に混乱を招いている点などから、主にサステナビリティ報告に焦点を当て、会計情報の複雑性に関する研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
重要文献を収集・整理するとともに、分析データの収集・整理を急ピッチで行い、会計情報の複雑性に関する実証分析を実施する予定である。国内外の学会や研究会で研究発表を行い、国内外の査読誌に論文を掲載したいと考えている。
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Causes of Carryover |
国内外の対面形式での学会や研究会に多数参加する予定だった。しかし、新型コロナの影響により対面形式からオンライン形式に切り替わったため、旅費をまったく使用できなかった。次年度は国内外の学会や研究会が徐々に対面形式に切り替わることが予想されるため、国内外の学会や研究会に積極的に参加し、そこで最新の知見を得るとともに、分析結果の報告なども積極的に行いたいと考えている。
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Research Products
(6 results)