2022 Fiscal Year Research-status Report
退職給付債務の遅延認識及び即時認識における時系列特性と価値関連性研究
Project/Area Number |
20K02013
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
吉田 和生 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (30240279)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
壁谷 順之 長崎県立大学, 地域創造学部, 准教授 (50588944)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 退職給付会計 / 遅延認識 / 即時認識 / 価値関連性 / 時系列分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度においては、検証課題3「遅延認識と即時認識における退職給付会計情報について企業価値との関連性を比較する」を中心に、データ分析を行った。具体的には(2002年3月~2013年3月)と(2014年3月~2021年3月)の分析期間について、次式を推定して退職給付費用に関する価値関連性を検証した。 企業価値t=C0+C1年金以外純資産t+C2純年金資産t+C3年金費用計上前利益t+C4償却費用以外の年金費用t+C5未認識債務償却費用t 分析結果は次の通りであった。年金の積立状況は市場評価と関連しており、純年金資産は企業価値と正の関係があった。2013年3月以前においては、会計基準変更時差異に係る償却費用は企業価値と正の関係があり、経営者による費用の前倒しを株式市場は積極的に評価していたと考えられる。また、2014年3月以後においては遅延認識の未認識債務償却費用と企業価値の間に正の関係があり、これらは償却年数や期待運用収益率といった基礎率の情報を反映していたと考えられる。こうした結果から、遅延認識を前提とした会計情報は基礎率との関連性が強く、経営者の意思決定を反映しており、それが企業価値との関係にも影響を与えていると考えられる。一方、2014 年3 月期から導入された即時認識を前提とする会計情報は経営者の裁量が反映されにくいものであると評価できる。 令和3年度までの研究期間においては、検証課題1「遅延認識と即時認識における関連費用の継続性や時系列の変動性を比較する」と検証課題2「遅延認識と即時認識における関連費用は期待運用収益率、割引率や償却年数の選択によって影響を受けている」の分析を行っている。今後はこれら3つの検証課題を統合して分析結果をまとめることが必要であり、令和5年度において行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データの分析については順調に進んでいるが、学会出張や企業調査が遅れている。新型コロナウイルスの流行が続いている中、海外出張や国内出張がようやく認められてきている。しかし、流行の波があり、当該出張が実施しにくい状況となっていることが要因としてあげられる。また、令和4年11月から12月にかけて体調を崩して、研究活動が停滞したことも当該研究の進捗度合いが遅れた要因としてあげられる。そのため、当該研究の研究期間を1年間延長して、令和5年度までに変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルスが沈静化している期間に、学会出張や企業調査を行うことを期待している。しかし、これに拘束されることなく、令和4年度に出版した研究論文(「退職給付会計における遅延認識の検証-費用平準化と価値関連性について-」『オイコノミカ』57(1))をベースにして、当該研究課題をまとめ上げる予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行により、海外出張や国内出張は再開されているが実施しにくい状況が続いている。今後、当該感染症の沈静化後、積極的に学外活動を展開していく予定である。
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Research Products
(2 results)