2023 Fiscal Year Annual Research Report
Stewardship and a History of Auditing
Project/Area Number |
20K02022
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鳥羽 至英 早稲田大学, 総合研究機構, その他(招聘研究員) (90106089)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | auditing / entrustment / fiduciary stewardship / assurance / discharging function / accountability / custodial responsibility / manor and guild audits |
Outline of Annual Research Achievements |
監査学という独立の学問を模索する中で、監査史という領域を認識するとともに、監査を捉える基本的視点として「委託受託関係」に基づいて生ずる「受託責任」(stewardship)を取り上げ、これに基づいて、英国、アメリカ、そして日本において誕生した初期の時代の監査の構造を、先行研究と新たな史料に基づいて分析した。上記の3か国のほかに、ドイツ監査研究者である内藤文雄教授から寄稿論文として3篇をいただき、分析はドイツを含め4か国とした。 監査の誕生は、委託受託関係の委託者(A)からの要請に基づくもの(A監査系列)と、受託者(B)からの要請に基づくもの(B監査系列)との2系列が存在することを説明したうえで、上記4か国において誕生した監査の構造を、A系列とB系列に分け、しかも、各系列におけるさまざまな監査の態様をいくつかの監査の型として性格づける、というアプローチを採用した。最後の年度においては、各系列ごとに各国の監査の型を整理した。 監査が誕生した社会と時代は異なるものの、監査人が受託者の受託責任を委託者の立場に立って実質的に解除する、という社会的機能を果たしていたとの結論が得られた。ただ、日本の会計検査院検査と地方自治体における監査委員監査については、本来の委託者は納税者であるが、監査人の法的建付け必ずしも明確ではなかった。 A監査系列で行われた監査は、基本的には、受託者が作成した会計帳簿およびそこから派生した財務諸表を監査の主題とする「言明の監査」(statement audit)であったが、規則遵守を狙いどころとする「行為の監査」も実施されていた。一方、B系列監査の主眼は受託者の誠実性を確かめることに置く「行為の監査」てあったが、現実には、受託者そのものの行為というよりは、受託者の指揮下にある奉公人や従業員の業務を検査対象とし、それをもって受託者の監査とするものであった。、
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