2020 Fiscal Year Research-status Report
組織内および組織間における重複的なマネジメント・コントロールに関する経験的研究
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20K02025
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大浦 啓輔 立命館大学, 経営学部, 教授 (20452485)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 組織間管理会計 / 組織間コントロール / バイヤー / サプライヤー / 境界連結者 / 役割葛藤 / 役割曖昧性 / 役割ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
サプライチェーン・マネジメントや原価企画において、バイヤー・サプライヤー間で生じる相互依存性を管理するために、企業境界を超えた「組織間コントロール」が実践されている。このとき、組織間取引の接点となる境界連結者は、組織内および組織間の二重のマネジメント・コントロールの影響下に置かれることになる。本研究課題では、第一に、このコントロールの二重構造が、サプライヤーの境界連結者の行動や心理に与える影響がどのようなものであるか、また第二に、コントロールの二重構造が組織内・組織間のコントロール設計に与える影響を明らかにすることによって、組織内・組織間のマネジメント・コントロールの二重構造の理論的体系化を目的としている。 当該年度に実施した研究の成果としては、この第一の研究課題の基礎となる調査およびその分析結果についてまとめあげた。まず、サプライヤー側の境界連結者に分析の焦点をあてた質問票調査を行い、メーカーがサプライヤーに対して、取引価格の基礎をなす原価目標、品質や機能などについて目標水準を設定する事例が紹介されているように、バイヤーはサプライヤーに対して多様な要求を提示していることをコントロールの範囲およびその強度の双方から測定した。他方、同質問票で、境界連結者は、自らの階層的組織において、責任会計の仕組みを通じて実施される予算コントロールの程度も測定した。そして、これらの組織内・組織間のコントロールの程度によって、境界連結者の役割ストレス(役割葛藤および役割曖昧性)に対して正負の影響を与えることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗としては概ね順調に進展していると自己評価できる。先に述べた研究実績についてある程度の研究成果を公表できる状況にあり、論文の公刊という意味においては計画以上の進展がみられる。当該年度末時点では、本研究課題における第一の課題について、日本会計研究学会において報告を行うとともに、報告時にいただいたコメント等を反映して論文の改訂を行い、国内の査読雑誌に論文投稿を済ませている。またそれを基礎とする展開論文をヨーロッパ会計学会において翌年度5月に発表することが決定している。このことから、現段階ではおおむね順調に進展していると評価を行った。ただし、その一方で、昨年度からの新型コロナウイルスの感染拡大およびその防止施策の影響によって、定量的な分析結果に対する、フォローアップのためのインタビュー調査などが実施できていない点で計画よりもやや遅れが生じてきており、フィールド調査に出られる時期等が現段階で不明瞭であることが今後の研究展開にとっての懸念点である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、5月に実施予定であるヨーロッパ会計学会での当該研究成果の報告を行うことをまず計画している。報告後には、論文の改訂等を行い、学会報告時の感触を確かめながら、国際的な査読雑誌への投稿を随時進める予定である。 他方、インタビュー調査および第二の研究課題についても次年度の夏を目処に調査研究の実施に着手することを計画しているが、昨今のコロナ禍の影響を注視しつつ、進められるところから研究を推進していく予定にしている。
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Causes of Carryover |
当該年度は企業調査や学会報告(国内学会および国際学会)等の旅費を支出することを計画していたが、それが新型コロナウィルスの影響によって延期あるいはオンライン実施となったため、旅費を使用する機会がなかった。また、世界的な半導体供給不足によって当該年度中に購入予定であったパソコン等の納入が遅れ、翌年度の支払いとなったために次年度仕様額が生じることとなった。 次年度については、遅延しているパソコンの納入と支払いを予定しており、また現段階では学会報告がオンキャンパスで予定されているため、これらの物品費および旅費に研究費を充当する予定である。
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