2021 Fiscal Year Research-status Report
経営者予想誤差の持続性と実物投資の効率性に関する研究
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20K02029
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
中條 良美 阪南大学, 経営情報学部, 教授 (00387383)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 経営者予想 / 予想誤差 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、経営者予想誤差を生じさせる要因を、将来を予測する経営者能力の観点から先行研究をもとに考察した。まず、企業行動の成果を規定する要因にはさまざまなものがあるが、そこには当然経営者の個人的な資質が含まれるはずである。日本ではいわゆる経営者の市場が発展していない状況なので、経営者の能力を報酬の多寡といった指標から判断することは難しい。企業が競争力を高めるためには、他企業よりも優れた経営者を確保する必要があるが、経営者の能力を定量的に把握することができなければ、有能な人材の確保は困難である。 周知のように、経営者の能力には、実物投資の将来における収益性を的確に予測する洞察力が含まれると考えられる。このとき、将来予測の正確性を担保するためには、何よりも有用な情報を取捨選択して予測に役立てる技術が必要とされる。情報処理の巧拙が実物投資の成否を左右することに鑑みれば、情報を効率的に活用する能力の高さは、経営者が優れた資質を備えていると評価されるための十分条件となる。他方で、事業環境の不確実性も企業から発信される情報の正確性に影響するため、経営者の情報処理能力をいかに測定すべきかという問題に直面することになる。 このような問題意識をもとに、経営者能力を観察可能な会計情報からどのようにして評価することができるかを、先行研究の成果をもとに検討した。そこでは、①経営者能力を企業の属性からいかに分離して把握するか、②経営者能力と情報処理能力の間の関係をどう考えるか、の2点が問われた。特に、会計情報の質には将来事象に関する見積りと測定の正確さが反映されるから、会計情報をもとに経営者能力を評価する際には②の視点が重要となる。そこに掲げられた経営者能力の測定値から、今後の実証研究の課題を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度に経営者予想誤差の持続性が実物投資に与える影響を定量的に把握することを予定しており、今年度までに必要なデータの収集および理論的基礎の構築を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
経営者予想誤差の持続性は、将来の業績を予測する経営者の能力に瑕瑾が生じている事実を反映していると考えられる。そこで最終年度においては、企業が手掛ける実物投資の効率性とこの持続性がいかなる関係にあるのかを、定量的に分析する。先行研究から導かれた投資効率の指標を複数用いて、そこに影響する他の要因をコントロールした上で、予想誤差の持続性がいかなる影響を及ぼすのかを検討する。あわせて、日本企業に特徴的な負の退出効果が、予想誤差の持続性と何らかの関係を有するのかについても検証する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で当初予定していた旅費の執行を物品への支出に振り替えたため、若干の誤差が生じた。当該金額については、今年度必要な消耗品等の購入に充てることで支出する予定である。
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