2020 Fiscal Year Research-status Report
会計基準のグローバリゼーションの現状と展開に関する解釈社会学による分析
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20K02031
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
井上 定子 兵庫県立大学, 会計研究科, 教授 (50388857)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 会計基準 / グローバリゼーション / 国際社会学 / IFRS |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、IFRSの導入に伴い生じる会計基準のグローバリゼーションにおいて、IFRSへの統一化(グローバル)に向けた動向だけでなく、IFRSからの乖離(ローカル)に向けた動向が観察される。つまり、グローバルとローカルとが混合してグローバリゼーションが進展している。このような複雑化する会計基準のグローバリゼーションの現状と今後の動向を国際社会学の知見を用いた学際的アプローチにより、包括的に解釈することが本研究の目的である。 そのため、本研究では、国際社会学におけるグローバリゼーションの概念整理を行い、分析モデルの構築と精緻化を行うことを第一段階として位置づけている。 本年度では、まず、グローバリゼーションおよびそれに伴うグローカリゼーションの用語や概念について概念整理を行った。具体的に、グローカリゼーション概念およびグローバリゼーション概念を(国際)社会学の観点から理論的に取り扱うとともに洗練化に努めた社会学者であるR.ロバートソン(Roland Robertson)をはじめ、彼の理論をさらに展開したG.リッツア(George Ritzer)や、V. ルードメトフ(V. Roudometof)などの社会学者を中心にサーベイを行った。 次に、彼らの理論をもとに①グローバルとローカルとの関係性を相互排他的関係と捉えるのか、相互浸透的関係と捉えるのか、②グローバリゼーションの終点は均質化(標準化)あるいは異種化(多様化)であるのか、③グローバリゼーションの原動力は何であるのか、という論点を軸として、単純化したグローバリゼーションの分析モデルを導出した。 最後に、IFRS適用の状態や過程をあらわす、アドプション、コンバージェンス、エンドースメントという概念に着目して、会計基準のグローバリゼーションの分析モデルを構築し、成果報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の第一段階として、国際社会学におけるグローバリゼーションの概念整理を行い、分析モデルの構築と精緻化を行い、成果報告として学会報告(国内)を行った。 しかしながら、成果報告として学会報告(国内)を行ったのみで、論文として発表できなかった点、関連する海外の学会での報告ができなかった点、提示した分析モデルの精緻化が不十分であり再検討が必要である点、そして、第二段階に入るための準備、例えば、テキスト分析の資料となる資料収集や整理が不十分である点を考慮すれば、順調とはいえず、やや遅れていると判断した。 原因としては、新型コロナウィルス感染症への対応(教育・学務)が急務となり、当該科研課題研究へのエフォートの当初の割合を確保することが非常に困難であったこと、そして関連する海外の学会への出席(情報収集や成果報告)が困難であったことが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、IFRS導入をめぐり相反する現象が観察されるEUや米国のIFRSに対する取組みを事例として取りあげ、第一段階で構築した分析モデルを踏まえて、それらのIFRS導入への取組みがどのように解釈可能であるのか検討することを、第二段階として位置づけている。具体的には、EUや米国における関連する公刊物を記述的に捉え、IFRSの受入側の反応を定性的にみるためにテキスト分析を行う予定である。 しかしながら、第一段階で示した分析モデルを再検討する必要性がある点、テキスト分析を実施する上での準備が不十分である点が課題である。とりわけ、テキスト分析のベースとなる辞書の作成に予想以上に時間を要すること、そして、新型コロナウィルス感染症への対応(教育・学務)が急務となり、当該科研課題研究へのエフォートの当初の割合を確保することが非常に困難であることが原因であると考えられる。加えて、当該感染症の影響から関連する海外の学会への出席ができず、当初予定していた情報収集および成果報告が困難であることも課題である。 対応策としては、次のような研究計画の変更を検討している。まず、分析の対象範囲の縮小を検討する。当初の研究計画では、EUおよび米国の基準設定機関、実務界、学界など、検討の対象範囲を広く想定してしていたが、基準設定機関に限定するなど狭くすることを検討する。次に、海外学会での情報収集ならびに成果報告を実施するために、新型コロナウィルス感染症の影響を鑑み、研究期間の延長も検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、主に今年度使用予定の旅費250,000円を全額使用していないことによる。これは、新型コロナウィルス感染症の影響から、予定していた海外の学会へ出席できなかったこと、そして、予定していた国内の学会および研究会がすべてオンライン開催であったことから、旅費等が掛からなかったためである。 使用計画としては、新型コロナウィルス感染症の影響を鑑み、翌年度以降に、国内外の学会等へ出席する際に必要となる、旅費、学会参加費、そして英文校正費用として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)