2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K02032
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
篠田 朝也 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (50378428)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 会計学 / 管理会計 / 投資意思決定 / 心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,投資意思決定会計の領域における「理論と実務のギャップ」の存在理由について,心理学を基礎理論とした実験研究のアプローチから明らかにすることを目指したものである。 本年度は,先行研究のレビューを中心に,投資経済計算の各種の経済性評価技法の特徴を整理したうえで,投資意思決定に直面する主体の経済性評価技法の選択に関する認知の基本的な特徴を明らかにすることに努めた。また同時に,意思決定心理学の領域の先行研究についての検討も進めた。Thalerが提示した「心の会計」の枠組みをはじめ,心理学の基礎理論として概念化されている各種のヒューリスティックの存在を想定して,管理会計上の意思決定に影響を及ぼしうるリスク選好等をはじめとする意思決定主体の内的要因について整理を行った。 これらの整理をもとに,当初の計画通りであれば,意思決定主体の内的要因が管理会計上の意思決定に及ぼす影響を検証するための実験の実施へ移行する予定であったが,新型コロナウイルス蔓延の影響を受けて,対面形式の実験実施が頓挫してしまい,実施形式を見直す必要に迫られた。現時点では,他領域のコロナ禍における心理学実験の実施状況についても情報収集をしながら,Zoomなどのwebミーティングシステムと,Googleフォームなどのwebアンケート回収システムなどを組み合わせて活用したうえで,自宅等からでも実験に参加可能であり,かつ検証事項をうまくコントロールできる,安価な実験モデルを構築できるように思案し,トライアル実施の準備までこぎつけている。 以上の通り,やや研究の実施計画に遅れは見られるものの,第2年度には,実験の実施に至ることができる目途が立ち始めており鋭意準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度については,新型コロナウイルスの蔓延によって,あらゆる影響を受けてしまったことで,計画通りに研究の遂行ができなかった。 まず,感染対策のため,大学に行くことができなかったこと,および,オンライン教育の準備のために,教育関連業務と研究関連業務の間のエフォート配分に想定していなかった調整が必要となってしまい,研究業務に割り当てる予定だった時間が減少してしまったことがあげられる。さらに,これが最も大きな要因であるが,本研究は心理学をベースとした社会科学実験を実施することを想定しているものであるが,これも新型コロナウイルス蔓延の影響のため,実験参加者を集めて対面による実験を実施することが困難となってしまい,実験実施のあり方について見直さざるを得なくなった。なお,本年度に開催された日本会計研究学会の統一論題で研究の成果の一部を報告する予定であったが,これも新型コロナウイルス蔓延の影響により,(学会自体は開催されたものの)統一論題が翌年開催の学会にスライドしてしまい報告機会・意見交換の機会の場も逸してしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を推進していくうえでの一番の懸念材料は,コロナ禍における社会科学実験の実施方法である。実験参加者を集めて対面による実験を実施する場合は,十分な感染対策のものとで実施する必要があるので対策方法を検討しているが,ソーシャルディスタンスの確保なども考慮すると1度の実験に参加できる人数に制約が生じてしまう。したがって,対面ではなく,オンラインでの実験実施を可能とするような仕組みについても確立できるように検討を進めている。現在のところ,Zoomなどのwebミーティングシステムと,Googleフォームなどのwebアンケート回収システムなどを組み合わせて活用したうえで,自宅等からでも実験に参加可能であり,かつ検証事項をうまくコントロールできる,安価な実験モデルを構築できるように思案しているところである。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延のため,当初予定していた対面方式での心理学実験の実施ができなくなったり,情報収集のための出張などもできなくなるなど,研究の進捗に大きな影響を受けてしまったため次年度使用額が生じてしまった。実験実施の方法をオンラインなどの非対面方式に切り替えることを検討しており,次年度使用額については,新たな実験の仕組みの構築ため使用すること,および,未実施であった実験の実施に伴い使用することを予定している。
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